技術資料

設計思想脅威モデル比較NIST AAL整理

Infront Security は、本人の電話からの発信を電話網で照合して認証する、コードレスの本人認証です。

読者対象 セキュリティ・システムご担当者様/認証方式の技術選定を行う方 技術資料を請求する
01

なぜ今、認証方式の
「脅威モデル」を問い直すのか

なりすましにかかる手間とコストが、生成AIによって大きく下がりました。

従来「人手で大量に仕掛けるには割に合わない」とされた攻撃は、AIによる文面生成・なりすまし・自動化で単価が急落しています。

この変化が直撃するのが、「ユーザーにワンタイムパスワード(OTP)を入力させる」タイプの認証です。この認証コードは、表示されて・伝送されて・入力される過程のどこかで奪えます。「盗めるデータ」が認証の中心にある限り、攻撃側のコスト低下がそのまま突破リスクになります。

認証のよりどころを、複製できるデータではなく、契約された電話回線への発信に置いています。

契約された電話番号への発信という物理操作は、情報として盗み出せません。

IPA

「情報セキュリティ10大脅威 2026」は、フィッシングと不正ログインを継続的な上位脅威として位置づけています。

2025

Anthropic は、攻撃ライフサイクルの大部分をAIに自動実行させたサイバースパイ活動(GTG-1002)の観測・無効化を報告しました。「人間が頑張らないと成立しなかった攻撃」は、もう前提ではありません。

02

認証コードを介さない、3ステップの本人認証

ユーザーは認証コードを受け取らず、入力もしません。本人の端末から指定番号へ発信し、電話網上で実在する電話番号を照合します。認証は約1秒で完了します。

STEP
01

電話番号を入力

ユーザーが自分の電話番号を入力します。パスワードの記憶も、アプリの追加も不要です。

STEP
02

本人の端末から発信

指定番号へワンタップで発信するだけ。認証コードの受信・転記・入力はどこにも発生しません。

STEP
03

電話網で実在番号を照合

発信元の電話番号を電話網上で照合し、なりすましを遮断します。

POINT発信番号とデバイス認証の併用

発信番号による通話認証に加えて、登録済みデバイスによるデバイス認証を併用する構成も選択できます。番号の偽装発信リスクを緩和します。電話番号はキャリアの本人確認・物理SIM・回線契約に裏付けられるため、電話網そのものが本人認証の根拠になります。

表示される認証コードが無い

画面に出ないものは、覗き見も撮影もできません。

伝送される認証コードが無い

送られないものは、経路上で傍受できません。

入力される認証コードが無い

入力させないものは、偽サイトに打たせて中継できません。

03

方式別・どこから破られるか― 脅威モデル比較 ―

主要な認証方式を、固有の脅威(SIMスワップ/SS7傍受/フィッシング入力/ディープフェイク)で公平に並べます。各方式には正当に評価すべき強みがあり、その強みと課題を分けて示します。競合製品名での優劣評価は行いません。

SMS-OTP

NIST:RESTRICTED(利用制限つき)

米国NISTのデジタルアイデンティティ標準(SP 800-63B-4)は、SMSや電話網(PSTN)を経由する認証コード(OTP)を利用制限つき(RESTRICTED)に分類しています。認証コードそのものを奪う攻撃が実在するためです。

  • SIMスワップ ── キャリアを欺いて番号を移し、着信する認証コードを受け取る
  • SS7傍受 ── 電話網の信号プロトコルの脆弱性を突き、伝送中のSMSを傍受する
  • フィッシング入力 ── 偽サイトに入力させた認証コードをリアルタイムに本物へ中継する(AIで自動化しやすい領域)

脅威面は「奪える1つの認証コード」に集約します。AIによる文面生成と中継自動化は、この攻撃のコストをさらに押し下げます。

パスキー(FIDO2 / WebAuthn)

フィッシング耐性が高い

公開鍵暗号ベースのパスワードレス認証で、傍受できる共有シークレットが存在しない設計は優れています。フィッシング耐性では現時点で最も強い方式のひとつです。

  • リカバリ経路 ── 端末紛失時の復旧にSMSやメールを使えば、その時点で弱い方式の脅威面を継承する
  • 端末・エコシステム依存 ── 認証器の同期・移行がプラットフォーム実装に依存し、組織の管理範囲の外に置かれやすい

パスキーが弱いという主張ではありません。強い本人認証を端末やリカバリ経路にどう接地させるかが、運用上の課題として残るという公平な整理です。

顔認証・生体認証

生成AIで脅威が悪化

利便性は高い一方、脅威モデルは生成AIによって明確に悪化しました。

  • ディープフェイク ── 写真・動画から合成した顔によるプレゼンテーション攻撃が現実的なコストで可能に
  • 不可変性 ── 生体情報は漏洩しても変更できず、突破手口が確立すると再利用される

「本人の顔」という情報も、AIにとっては複製・合成の対象になりました。

3Dセキュア(EMV 3-Dセキュア)

フリクションレスは優秀

EC決済の本人認証として広く使われ、リスクベースで認証をスキップするフリクションレス認証は、利便性と不正抑止を両立する優れた仕組みです。課題はチャレンジ(追加認証)が発生する場面に出ます。

  • チャレンジ起因の離脱 ── 認証コード入力を求められた瞬間、相当数のユーザーが購入を断念する
  • チャレンジ時の脅威面 ── 認証コード入力に回帰すると、SMS-OTPと同じ傍受・フィッシング入力の脅威面が開く

問題は方式そのものではなく、チャレンジ時にどの認証手段へ落とすかにあります。

電話発信認証(Infront Security)

認証コードを介さない

ユーザーは認証コードを受け取らず、入力もしません。本人の端末から指定番号へ発信し、電話網上で実在する電話番号を照合することで本人性を確認します。

  • 盗むべき認証コードが存在しない ── 表示・伝送・入力される認証コードがないため、傍受もフィッシングによる入力中継も構造的に成立しない
  • 発信番号とデバイス認証の併用 ── 通話認証(発信番号の照合)に、登録済みデバイスによるデバイス認証を併用する構成で、偽装発信リスクを緩和する
  • 物理回線は複製できない ── 契約された電話回線は、情報として盗み出して再現できる対象ではない

※ここで言う「複製できない」は、回線を情報として複製・再現できないという意味です。キャリアを欺いて番号を移すSIMスワップは「複製」ではなく別系統の課題であり、デバイス認証を併用する構成で、実害の発生を抑えます。

情報は盗めても、
契約された物理の電話回線は複製できない。

脅威モデル比較表

7つの観点で、主要方式と電話発信認証を並べて評価します。

観点SMS-OTPパスキー顔認証3Dセキュア電話発信認証
(Infront)
認証コード傍受・
フィッシング入力
成立する 共有シークレット無し 別経路 チャレンジ時に開く 認証コードが存在せず構造的に不成立
SIMスワップ 直撃 影響なし 影響なし 認証手段依存 PSTN共通課題(デバイス認証の併用で緩和)
SS7傍受 影響あり 影響なし 影響なし 認証手段依存 傍受すべき認証コードが無い/PSTNは共通
発信者番号偽装
(Caller ID spoofing)
影響なし 影響なし 影響なし 認証手段依存 PSTN側の対策+デバイス認証の併用で緩和
生成AIによるなりすまし 中継自動化が容易 耐性高い ディープフェイク 認証手段依存 物理回線を複製できない
標準上の位置づけ RESTRICTED
(NIST SP 800-63B-4)
フィッシング耐性が高い 規格依存 決済本人認証の標準 所持factor
(PSTN共通リスクは明示)
利便性(離脱の少なさ) 入力負荷 端末次第 低摩擦 フリクションレスは優秀 認証コード入力不要
証跡(監査ログ) 方式・実装依存 実装依存 実装依存 取引単位で取得 認証イベント単位で取得可

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凡例:◎=構造的に強い/○=条件つきで強い/△=条件・実装に依存/✕=既知の弱点あり。
各方式は固有名(SIMスワップ/SS7/NIST SP 800-63B-4)で公平に評価しており、競合製品名での優劣評価は行っていません。

04

認証強度(NIST AAL)と既存基盤への統合

NIST SP 800-63B-4 は認証強度を AAL1〜AAL3 で定義します。重要な前提として、電話番号は所持(possession)に基づくfactorであり、所持factor単体ではAAL1相当にとどまります。

ID/パスワード等と組み合わせた多要素(MFA)構成の一要素として利用でき、AAL2相当の構成に組み込めます。

AAL3はハードウェア認証器などの要件があり、本方式は該当しません。AAL2以上の水準を語るのは、他factorと組み合わせたMFA構成が前提です。

既存の認証基盤を、置き換えずに一段強くする

REST API、またはリダイレクト型の統合フローで、現行の認証基盤を作り替えずに追加できます。IdP(Okta/Entra 等)との連携は将来対応予定です。

REST API リダイレクト型統合フロー ステップアップ認証
AAL1
単一factor(所持factor単体はここ)
AAL2
多要素(MFA)構成
AAL3
ハードウェア認証器等の固有要件

※ Infront Security はID/パスワード等と組み合わせた多要素(MFA)構成の一要素として利用でき、AAL2相当の構成に組み込めます。AAL3はハードウェア認証器などの要件があり、本方式は該当しません。出典:NIST SP 800-63B-4

公開の線引きについて

本ページは、堅牢な状態を守るための設計思想・脅威モデルの公開版です。認証フローの詳細なレスポンス内容や実装の深部については、セキュリティ確保の観点からNDA(秘密保持契約)締結後に開示します。

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