コラム

“パスキーなら安全”は本当か——アコム登録停止で露呈したフィッシング耐性の限界
近年、AIが悪用された高度なフィッシング攻撃の登場により、パスワードやSMS OTPといった従来の認証方式の脆弱性が露呈しています。 こうした背景から、パスキー(生体認証を含むFIDO準拠の認証方式)は、フィッシングに強く安全な代替手段として注目され、金融サービスをはじめ導入が進んでいます。しかし2025年7月末、大手消費者金融のアコムがセキュリティ上の理由から新規の生体認証登録を一時停止すると発表し、その“絶対的な安全神話”に揺らぎが生じています。 本記事では、アコムの発表内容とその背景、そして生体認証の限界を補う具体的な解決策について解説します。 1. アコムが生体認証登録の一時停止を発表 2025年7月31日に緊急告知 アコム株式会社は2025年7月31日付で、公式サイトにて「新たな生体認証登録を一時停止する」との緊急告知を発表しました。同社は、偽のログインページで利用者が情報を入力する被害が確認されたため、被害拡大を防ぐ目的で新規登録を一時停止したと説明しています。 これにより、アプリの初回ログイン時やログイン後に生体認証の新規登録を行おうとするとエラーが表示され、手続きが完了できない状態となっています。すでに登録済みの利用者には影響がないとされるものの、セキュリティへの信頼性に疑問を抱かせる結果となりました。 利用できなくなるサービス一覧と代替手段 今回の一時停止措置は「新規の生体認証登録」のみが対象で、既存ユーザーは従来どおり利用できます。一方で、未登録の利用者は、ローン申込や契約手続きの一部に支障が出るほか、以下の機能が利用できなくなります。 スマホATMでの借入 クレジットカード情報の確認 暗証番号照会 アプリ経由でのApple Pay・Google Pay登録 急ぎで融資を受けたい利用者については、「口座振込による借入」を代替手段として利用できると案内されています。 登録停止はあくまで一時的な措置とされていますが、再開の時期は明らかにされておらず、利用者は当面の間、最新の発表を確認しながら対応する必要があります。 2. なぜ“登録停止”という強硬策に至ったのか 消費者金融を狙うフィッシング詐欺の急増 2024年秋ごろから、消費者金融の利用者を狙ったフィッシング詐欺が急増しています。典型的な手口は、偽のメールやSMSを送付し、あるいは検索広告を経由して偽サイトへ誘導するというものです。 消費者金融には、攻撃者にとって狙いやすい特性がいくつかあります。 スマホからの利用が中心であり、リンクを踏んですぐにログインするケースが多い 急ぎで資金を必要とする利用者が多く、冷静な判断が難しい アプリ内でATM出金や決済、暗証番号照会といった価値の高い機能に直結している 攻撃の流れとしては、偽サイトに誘導された利用者が会員番号やパスワード、暗証番号を入力し、その直後に不正利用や登録フローの乗っ取りが行われるというものです。本物そっくりのドメイン(typoやPunycode)、緊急を装う文言、さらには偽のサポート電話を併用する例も確認されています。 今回のアコムによる登録停止も、こうした背景にある攻撃環境を踏まえた対応であり、特定の企業だけでなく業界全体に及ぶリスクが存在していることを示しています。 生体認証の導入目的と裏目に出たリスク...
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【保存版】電話認証の種類と仕組みまとめ|技術の違いと導入時のポイントを解説
電話認証は、オンラインサービスの不正利用防止やセキュリティ強化に欠かせない仕組みです。本記事では、SMS認証、IVR認証、電話発信認証、電話発信×端末認証の4種類の技術について、それぞれの特徴や仕組みをわかりやすく解説します。 導入される業界や活用シーンにも触れながら、自社に最適な認証方式を選ぶための基礎知識を提供します。 1. 電話認証とは?種類と仕組みをわかりやすく解説 そもそも電話認証とは何か? 電話認証とは、ユーザーの電話番号を使って本人確認を行う仕組みです。ID・パスワード認証に加え、電話回線を利用した二要素認証を組み合わせることで、本人確認の精度を高め、複数アカウントの作成やなりすまし、不正アクセスを防ぎます。現在は、SMSでコードを送る方式のほか、ユーザーが指定番号に電話をかけて認証する方式や、端末情報と連動させた高度な認証も登場しています。 これらはセキュリティの高さや利用環境に応じて選べるのが特長で、導入によって不正防止によるコスト削減や、認証がスムーズになることで離脱率を減らす効果も期待できます。 導入されている業界や利用シーン 電話番号は「複製が難しい」という特性から、多くの業界で幅広く活用されています。 例えばECサイトでは、初回クーポンの不正利用やサブスクリプション型サービスの無料トライアルを何度も申し込む行為を防ぐため、1つの電話番号につき1アカウントと制限しています。この仕組みにより、実在する番号だけが登録でき、架空アカウントの排除や健全な運営、収益の確保につながります。 チケット販売やイベント予約でも同様に、転売目的による大量アカウント作成を防止します。購入前に電話認証を挟むことで、実在する利用者だけが申し込める仕組みを作り、公平な販売環境を維持できます。 この「複製が難しい」という特性はセキュリティ面でも有効です。金融・証券業界では、IDやパスワードが漏れても本人からの電話発信がなければログインできず、フィッシング詐欺の対策として機能します。 さらに近年は行政サービスや公共料金支払いにも広がり、本人確認精度が求められる手続きで不正を防ぎつつ、高齢者やネット利用が不慣れな人にも使いやすい技術として注目されています。 2. SMS認証:最も一般的な電話認証技術 SMS認証の仕組みと流れ SMS認証は、ユーザーが登録した電話番号宛にワンタイムパスコード(OTP)をSMSで送信し、そのコードを入力させて本人確認を行う方式です。サービス側はユーザーが入力したコードと送信したコードを照合し、一致すれば認証成功となります。 コードは短時間で有効期限が切れるよう設定され、不正利用にも対策されています。 実装は比較的容易で、スマートフォン標準のSMS機能を活用できるため、多くのWebサービスやアプリに採用されています。 メリットとデメリット SMS認証のメリットとして、まず追加アプリや専用機器を必要とせず、SMS受信とコード入力だけで利用できる点が挙げられます。これにより、年齢層やITリテラシーを問わず直感的に操作でき、アプリのインストールやアカウント連携が不要な分、離脱率の低下にもつながります。 既存のスマートフォンと通信網を活用できるため初期投資がほぼ不要で、API連携のみで導入可能なサービスも多く、開発期間の短縮にも有効です。さらに、ガラケーを含むほぼすべての携帯電話で利用できるなど、対応環境の幅広さも大きな利点です。 ただし、ランニングコストは想定以上に高くなる場合があります。例えば「1回の認証=1通のSMS送信」が前提でも、再送や入力ミスで平均4通程度になる事例があり、その分通数課金が増加します。 さらに、SMS受信用番号を大量取得・貸し出す業者の存在や、データSIM契約による容易な番号入手が不正利用やなりすましの温床となっている点も課題です。 加えて、回線状況やキャリア障害による遅延・不達、6桁コードの総当たり攻撃やSIMスワップ、端末乗っ取り、マルウェアによる傍受などセキュリティ面のリスクも残ります。 端末操作に不慣れな層やSMS利用経験のないユーザーは認証を完了できず離脱する恐れもあります。 向いているユースケースと注意点 SMS認証は、ECサイトの会員登録やパスワードリセット、ポイント交換など、中〜低リスクの取引に適しています。 例えば、オンラインゲームやSNSでの多重アカウント作成や短期間での大量登録を行う業者・BOTの排除に有効です。また、フリーWi-Fi利用登録やキャンペーン応募など、高度なセキュリティよりもスムーズな利便性が求められる場面でも活用できます。 一方、SMSが届かない場合の再送機能は利便性を高める反面、不正利用のリスクを伴う可能性があります。...
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3Dセキュア2.0の「チャレンジ認証」を完全攻略!仕組みからエラー対策まで網羅
ネット決済で求められる3Dセキュアの「チャレンジ認証」に、戸惑いや不便を感じていませんか?この記事では、チャレンジが発生する仕組みである「リスクベース認証」から、具体的な発生シナリオ、カード会社ごとの違い、エラー対策まで徹底解説。結論として、チャレンジは不正利用を防ぐための重要な追加認証です。その仕組みと正しい対処法を理解し、安全でスムーズなオンライン決済を実現しましょう。 1. 3Dセキュア2.0の核心「リスクベース認証」と「チャレンジ」の仕組み オンラインショッピングでクレジットカード決済をする際、カード会社のロゴが表示されたパスワード入力画面や、スマートフォンでの認証を求める画面に切り替わった経験はありませんか?それが「3Dセキュア」による本人認証です。特に、追加の認証が求められるケースを「チャレンジ認証」と呼びます。 この章では、なぜチャレンジ認証が発生するのか、その裏側にある3Dセキュア2.0の核心的な仕組みである「リスクベース認証」について、初心者にも分かりやすく解説します。 1.1 チャレンジ認証とは?不正利用を水際で防ぐ追加認証 チャレンジ認証とは、3Dセキュア2.0において、クレジットカード決済がカード保有者本人によるものかを確認するために行われる「追加の本人確認手続き」のことです。チャレンジ(Challenge)という言葉の通り、カード会社が取引の安全性に確信が持てない場合に、利用者に対して「本当にあなた本人ですか?」と問いかけ(挑戦し)、それを証明してもらうプロセスを指します。 フィッシング詐欺や情報漏洩などによって、カード番号やセキュリティコードが第三者の手に渡る事件は後を絶ちません。実際に、一般社団法人日本クレジット協会の調査によると、2023年のクレジットカード不正利用被害額は過去最悪の540.9億円にのぼり、その多くがカード番号を盗用されたことによる被害でした。(出典: 一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害額の発生状況」) チャレンジ認証は、こうした第三者による「なりすまし」を防ぎ、不正利用を水際で阻止するための最後の砦として機能します。たとえカード情報が盗まれたとしても、本人しか知らないパスワードや、本人のスマートフォンにしか届かないワンタイムパスワードの入力を求めることで、第三者が決済を完了させることを極めて困難にするのです。 1.2 チャレンジが発生する/しないは「リスクベース認証」で決まる 「毎回パスワードを入力するのは面倒…」と感じる方もいるでしょう。しかし、最新の3Dセキュア2.0では、必ずしも毎回チャレンジ認証が発生するわけではありません。その鍵を握るのが「リスクベース認証」という仕組みです。 リスクベース認証とは、決済ごとに行われる取引の状況をリアルタイムで分析し、不正利用のリスク度合いを判定する仕組みです。カード会社は、ECサイトや決済代行会社から提供される様々な情報を基に、その取引が「本人による可能性が高いか(低リスク)」、それとも「第三者による不正の疑いがあるか(高リスク)」を瞬時に判断します。そして、そのリスク判定の結果に応じて、追加認証(チャレンジ)を行うかどうかを決定しているのです。 1.2.1 カード会社がリスク判定に利用する情報とは では、カード会社は具体的にどのような情報を使ってリスクを判断しているのでしょうか。EMVCo(※)が定める国際規格に基づき、以下のような多角的な情報が利用されています。 ※EMVCo:Visa、Mastercard、JCB、American Express、Discover、UnionPayの国際カードブランド6社が共同で設立した、決済技術の標準化と普及を推進する団体。 リスクベース認証で利用される情報の例 情報のカテゴリ 具体的な情報内容 解説 デバイス情報 PC、スマートフォン、OSの種類・バージョン、ブラウザ情報など いつも利用している端末からのアクセスか、不審な設定のデバイスではないかなどを確認します。 アクセス情報 IPアドレス、接続国、時間帯など 普段と異なる国からのアクセスや、深夜など不自然な時間帯の利用ではないかを判定します。...
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その違い、説明できますか?二要素認証・多要素認証・二段階認証の正しい使い方
「二要素認証」「多要素認証」「二段階認証」、これらの言葉の正確な違い、ご存知ですか?この記事を読めば、それぞれの認証方式の定義、仕組み、メリット・デメリットが明確に理解できます。オンラインサービス利用時のセキュリティ強化に不可欠なこれらの認証方式を正しく使い分け、不正アクセスを防ぐための知識が身につきます。 1. はじめに 二要素認証 多要素認証 二段階認証の重要性 オンラインバンキング、SNS、クラウドサービスなど、私たちの生活は数多くのデジタルサービスに支えられています。これらのサービスを安全に利用するためには、「本人であること」を正しく確認する「認証」の仕組みが不可欠です。近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化・悪質化しており、従来のIDとパスワードだけの認証では、不正アクセスや情報漏洩のリスクを防ぎきれないケースが増えています。 そこで注目されているのが、「二要素認証(2FA)」「多要素認証(MFA)」「二段階認証」といった、より強固な認証方式です。これらの言葉を耳にする機会は増えましたが、それぞれの違いや正しい意味、具体的な使い方を正確に理解しているでしょうか? 実は、これらの認証方式は混同されやすく、誤った認識のままでは、せっかくのセキュリティ対策も効果が半減してしまう可能性があります。 本記事では、セキュリティ対策の基本とも言えるこれらの認証方式について、それぞれの定義、仕組み、メリット・デメリット、そして正しい選び方や使い方を分かりやすく解説します。安全なデジタルライフを送るために、認証の知識をアップデートしましょう。 1.1 なぜ今、認証強化が求められるのか? 私たちが日々利用するオンラインサービスには、個人情報や決済情報といった機密性の高いデータが数多く含まれています。これらの情報が一度漏洩したり、アカウントが乗っ取られたりすると、金銭的な被害だけでなく、社会的な信用の失墜にも繋がりかねません。認証強化が急務とされる背景には、主に以下の要因があります。 サイバー攻撃の高度化・常態化: フィッシング詐欺、パスワードリスト攻撃、マルウェア感染など、攻撃者は常に新しい手口で認証情報の窃取を試みています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」でも、不正アクセスや情報漏洩に関連する脅威が常に上位を占めており、個人・組織を問わず、誰もがサイバー攻撃の標的となり得る時代です。 従来のID/パスワード認証の限界: 多くのサービスで基本となっているIDとパスワードによる認証は、パスワードの使い回し、推測されやすい文字列の使用、フィッシングによる詐取といった脆弱性を抱えています。どれだけ複雑なパスワードを設定しても、それが漏洩してしまえば意味がありません。 クラウドサービス利用の拡大と働き方の多様化: クラウドサービスの普及やテレワークの浸透により、場所やデバイスを問わずに重要な情報へアクセスする機会が増えました。 これは利便性を向上させる一方で、不正アクセスのリスクポイントも増加させることになり、より強固な本人確認手段が求められています。 このような状況下で、単一の認証情報だけに頼るのではなく、複数の認証手段を組み合わせることでセキュリティ強度を高めるアプローチが不可欠となっています。 1.2 認証方式の多様化とその背景 セキュリティに対する意識の高まりとともに、認証方式も進化し、多様化してきました。従来のパスワード認証の弱点を補うために登場したのが、「二段階認証」「二要素認証」「多要素認証」といった考え方です。 これらの認証方式は、「何かを知っている(知識情報)」「何かを持っている(所持情報)」「自分自身である(生体情報)」といった異なる種類の認証要素を組み合わせることで、不正アクセスの難易度を格段に高めます。たとえ一つの認証情報が破られても、他の認証情報が関門となるため、アカウントの乗っ取りを防ぐ効果が期待できます。 しかし、これらの用語はしばしば混同されたり、同義として扱われたりすることがあります。それぞれの認証方式が持つ意味や特性を正しく理解することが、自社のサービスや個人アカウントのセキュリティレベルを適切に評価し、必要な対策を講じるための第一歩となります。 2. 二段階認証とは何か オンラインサービスやシステムを利用する際、**セキュリティを強化するために用いられる認証方法の一つが「二段階認証」**です。近年、不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まる中で、IDとパスワードだけの認証では不十分とされるケースが増えてきました。そこで注目されているのが、複数の認証ステップを組み合わせることで、アカウントの安全性を高めるアプローチです。二段階認証は、その中でも比較的導入しやすく、多くのサービスで採用されています。 この章では、二段階認証の基本的な仕組みから、具体的な利用例、そしてそのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。正しく理解し活用することで、あなたの大切な情報を不正アクセスから守る一助となるでしょう。 2.1 二段階認証の基本的な仕組み 二段階認証(Two-Step Verification、2SV)とは、その名の通り、認証プロセスを「二つの段階」に分けて行う仕組みを指します。通常、最初の段階では利用者が記憶している情報(IDとパスワードなど)を入力し、それが正しい場合に次の段階へ進みます。そして、第二の段階では、第一段階とは異なる方法で本人確認を行います。 具体的には、以下のような流れで認証が行われます。...
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パスキー=万能じゃない?便利な仕組みと知っておくべきデメリット
「パスキーは本当に安全で便利なの?」「パスワードと何が違うの?」そんな疑問をお持ちではありませんか? 本記事では、次世代の認証技術として注目されるパスキーの基本的な仕組みから、パスワード認証との決定的な違いまで徹底解説します。 さらに、フィッシング詐欺に強いといったメリットだけでなく、「使いにくい」「危険性がある」といった見落とされがちなデメリットやリスク、復旧の難しさまで深掘り。パスキーが「万能ではない」理由を明らかにし、あなたの認証に関する不安を解消し、より安全な選択肢を検討するための知識を提供します。 1. パスキーとは?パスワードとの違いまで徹底解説 近年、パスワードに代わる次世代の認証技術として注目を集めている「パスキー」。その基本的な仕組みから、これまで主流だったパスワード認証との違いまで、詳しく解説します。 1.1 パスキー認証の基本的な仕組み パスキー(Passkey)は、パスワードを使わずにウェブサイトやアプリケーションにログインできる新しい認証方式です。FIDO Allianceが提唱する「FIDO2」という技術標準に基づき、WebAuthn(ウェブオースン)というWeb標準技術によって実現されています。 パスキー認証の最大の特長は、公開鍵暗号方式を利用している点にあります。 ユーザーがサービスに登録する際、利用しているデバイス(スマートフォン、PCなど)上で秘密鍵と公開鍵のペアが生成されます。このうち、公開鍵のみがサービス提供側のサーバーに登録され、秘密鍵はユーザーのデバイス内に安全に保管されます。 ログイン時には、ユーザーはパスワードを入力する代わりに、デバイスの生体認証(指紋、顔認証など)やPINコードを使って認証を行います。 これにより、デバイス内の秘密鍵が利用され、サービス側が要求する「チャレンジ」(ランダムなデータ)に対して署名が行われます。サービス側は、事前に登録された公開鍵を使ってこの署名を検証することで、本人であることを確認します。 この仕組みにより、ユーザーは複雑なパスワードを覚える必要がなく、また、サービス提供側のサーバーにはパスキーそのもの(秘密鍵)が保存されないため、サーバーからの情報漏洩による被害リスクを大幅に低減できます。 1.2 パスワード認証の仕組みと課題 これまでインターネット上の認証の主流であったパスワード認証は、ユーザーが設定した文字列(パスワード)と、サービス提供側のサーバーに保存されたパスワード(多くはハッシュ化されたもの)を照合することで本人確認を行う仕組みです。 しかし、このパスワード認証には多くの課題が指摘されています。 覚えにくさと使い回し:セキュリティを強化するためには複雑で長いパスワードが必要ですが、これはユーザーにとって覚えにくく、結果として複数のサービスで同じパスワードを使い回してしまう「パスワード使い回し」の温床となります。 フィッシング詐欺のリスク:偽サイトに誘導され、パスワードをだまし取られるフィッシング詐欺の被害が後を絶ちません。ユーザーがフィッシングサイトと正規サイトを見分けるのは非常に困難です。 サーバーからの漏洩リスク:サービス提供側のサーバーがサイバー攻撃を受け、保存されているパスワード情報が漏洩するリスクがあります。ハッシュ化されていても、辞書攻撃やブルートフォース攻撃によって解読される可能性があります。 入力の手間:サービスを利用するたびにパスワードを入力する手間がかかります。 これらの課題を解決するため、二段階認証や多要素認証が普及しましたが、これらはパスワード認証の根本的な脆弱性を補完するものであり、ユーザーの利便性を損なう側面もありました。 1.3 パスキーとパスワード 何が違う? パスキーとパスワードは、どちらもユーザー認証に使われる手段ですが、仕組みやセキュリティ、使いやすさに明確な違いがあります。以下に主なポイントを簡潔に整理します。 認証方式パスキーは、デバイスに保存された秘密鍵とサーバーの公開鍵を使う「公開鍵暗号方式」を採用し、安全性を確保しています。一方パスワードは、ユーザーが記憶した文字列をサーバーに送って照合する「共有秘密鍵方式」です。 記憶の負担パスキーは、ユーザーが秘密鍵を覚える必要がなく、生体認証やPINで端末を解錠するだけで利用可能です。パスワードは複雑な文字列を覚えて入力する必要があり、記憶・入力の手間が大きくなります。...
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AI時代に問われる生体認証の安全性:脅威と対策の最新情報
生体認証はパスワードに代わる便利な認証手段として普及が進んでいます。しかし、AI技術の進化はディープフェイクなどの新たな脅威も生み出しており、その安全性に注目が集まっています。本記事では、生体認証の基礎知識から最新の脅威、そして多層防御やゼロトラストといった有効なセキュリティ対策までを網羅的に解説。AI時代の生体認証を安全に活用するためのポイントが分かります。 1. 生体認証技術の概要 生体認証とは、指紋、顔、虹彩、声、静脈といった個人の身体的特徴や、署名、キーストロークといった行動的特徴など、人それぞれに固有の生体情報を利用して本人確認を行う技術です。従来の知識情報(パスワードやPINコード)や所持情報(ICカードや鍵)による認証方法と比較して、紛失や盗難のリスクが低く、なりすましが困難であるという大きなメリットがあります。また、利用者がパスワードを記憶したり、認証媒体を携帯したりする必要がないため、利便性の向上にも大きく貢献します。デジタル化が急速に進展する現代社会において、オンラインサービスへのログイン、金融取引、施設の入退室管理など、多岐にわたるシーンで生体認証の活用が拡大しており、私たちの生活に不可欠なセキュリティ技術となりつつあります。 1.1 身体的特徴を利用する認証 生体認証技術は、認証に用いる生体情報によって、主に「身体的特徴(Static Biometrics)」を利用するものと、「行動的特徴(Behavioral Biometrics)」を利用するものに大別されます。 身体的特徴を利用する認証とは、個人の身体そのものが持つ不変的な特徴を読み取って認証する方式です。 ■ 指紋認証 概要・仕組み 指先の紋様(隆線パターン)を読み取り、登録された指紋と照合 光学式、静電容量式、超音波式などの方式がある メリット 個人ごとに異なるため認証精度が高い 小型化しやすく、スマホなどに組み込みやすい 比較的低コストで導入できる デメリット・課題 指の乾燥や濡れ、傷などで認証失敗の可能性 残った指紋からの偽造リスク 接触型は衛生面での懸念あり 主な利用シーン スマートフォンやPCのログイン 勤怠管理、入退室管理 キャッシュレス決済端末など ■ 顔認証 概要・仕組み...
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