コラム

国際犯罪組織の転売スキーム:不正カードを利用した詐欺の手口と対策
近年、クレジットカードの不正取引が急増しており、国際犯罪組織が関与するケースも増加しています。詐欺の手口は年々巧妙化し、従来の対策だけでは十分に対応しきれない状況が続いています。 本記事では、不正カード取引の手口やその後の転売の流れを明らかにし、EC事業者が直面するリスクとその対策について詳しく解説します。 1. 国際犯罪組織の手口 相次ぐ不正カード取引とその実態 近年、クレジットカード情報を不正に入手する犯罪が増加しています。 特に2023年は暴力団員が不正に入手したクレジットカード情報を利用し、高額な化粧品や日用品を大量に購入した後、フリマアプリを通じて転売・換金を行っていたことが発覚しました。 決済を複数の少額決済に分けて行うことで、不正検知システムを回避しやすい手法も用いられており、これが不正利用の発覚を遅らせた一因となっています。同年5~6月には、輸入販売業者や製薬会社など計38社が被害を受け、その総額は約150万円にのぼるとみられています。 背後に潜む組織的犯罪 このような不正カード取引の背後には、国際的な犯罪組織の関与が確認されています。今回の事件でも、日本国内で活動する暴力団が実行役となったものの、収益の大部分は中国などの海外へと渡ったとみられています。 日本人を狙った詐欺では、海外の犯罪組織が暗躍しているケースは珍しくありません。 東京未来大学こども心理学部の出口保行教授(犯罪心理学)は、性善説が根強い日本人は国際犯罪組織に狙われやすく、フィッシング詐欺による個人情報の流出が多発しており、被害への警戒が必要だとしています。 2. 不正転売の流れ フィッシング詐欺で個人情報を入手 不正転売スキームの第一段階として、犯罪者はフィッシング詐欺を利用してクレジットカード情報を不正に入手します。代表的な手口の一つとして、大手企業を装った偽のメールやウェブサイトを用い、カード所有者に情報を入力させる方法があります。 また、SNSやメッセージアプリを通じて偽のキャンペーンを装い、ユーザーを誘導するケースも増えています。 不正カードで商品購入 入手したクレジットカード情報を利用し、犯罪者は高額な化粧品や電子機器など、転売価値の高い商品を購入します。一度の購入金額が高すぎることが特徴の一つでしたが、最近では不正検知を避けるために複数の少額取引に分散させ、通常の購買行動を装うことがあります。 購入した商品の送付先住所はウィークリーマンションや宅配センターなど、カード所有者の住所とは異なる住所を記載し、所有者本人に気付かれる前に商品を受け取ります。 フリマで転売し換金 購入した商品は、フリマアプリやオークションサイトを通じて転売され、現金化されます。匿名性が確保されやすいプラットフォームを利用することで、取引の痕跡を残さずに換金することができ、換金後の追跡を困難にする手法が取られています。 このように不正転売スキームは、個人情報の詐取から商品購入・転売・換金まで一連のプロセスを通じて巧妙に実行されており、その件数は増加の一途を辿っています。 3. 広がる不正と対策の難しさ フィッシング詐欺の巧妙化 近年のフィッシング詐欺はますます巧妙化しています。攻撃者は公式サイトに酷似した偽メールや偽サイトを作成し、ユーザーが詐欺と見抜くことを困難にしています。 例えば、「あなたの情報が不正利用されています」といった警告メッセージで不安を煽り、騙されたユーザーがログイン情報を入力すると、その情報は即座に攻撃者へ渡ってしまうのです。さらにAIを活用したリアルタイムフィッシングが進化したことで、ユーザーが入力した情報を瞬時に悪用する手法も登場しています。これにより、ユーザーが気づく前に不正取引が実行できてしまうのが実状です。 フィッシング詐欺のターゲット自体も拡大しており、最近では個人だけでなく、企業の決済担当者や経理部門も標的となっています。特に、ビジネスメール詐欺(BEC)は深刻な被害をもたらし、適切な対策を怠れば企業は巨額の損失を被る可能性があります。 本人認証なしで進むネット取引のリスク...
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増加する転売行為の実態とその影響:ブランドを価値を守るInfront Securityの解決策
転売行為は年々増加し、多くのブランドが直面する深刻な課題となっています。人気グッズや限定商品が正規ルートを離れ、高額なプレミア価格で取引される現状は、正規顧客の不満を招き、ブランド価値を揺るがしかねない大きなリスクをはらんでいます。しかし、転売を完全に阻止することは法律や技術面の限界もあり、決して簡単ではありません。 本記事では、転売行為の実態と、ブランドに与える影響を詳しく解説。さらに、Infront Securityの認証ソリューションが、なぜ転売対策として有効なのかを紹介します。 1.増え続ける転売行為 転売行為は、今やブランド価値や顧客との信頼関係に直接的な悪影響を及ぼす深刻な問題です。特に人気商品や限定アイテムがターゲットになりやすく、正規顧客が購入できない状況が続いています。また、転売対策として購入制限や抽選販売を導入しても、商品の希少性が高まることで転売業者の利益をさらに拡大する結果になることもあります。 ここでは、最近ニュースとなった具体例を見ていきましょう。 ディズニーグッズ 2024年8月29日、東京ディズニーリゾートで新たに発売されたダッフィーの限定グッズが転売のターゲットとなり、約80人の転売業者とみられる集団が開園前に集まりました。彼らは列への割り込みや場所取りを行い、一部のグッズはフリマサイトで定価の2倍近い価格で転売されています。ファンからは「正規価格で手に入れられないのは非常に残念」との声が上がっています。 ニンテンドーミュージアムグッズ 2024年10月2日にオープンした「ニンテンドーミュージアム」でも、限定グッズが高額転売される事態が発生しました。「Nintendo Switch」キーホルダーやマリオが描かれたクッキー缶などが、フリマサイトで定価の2倍以上の価格で取引され、任天堂はグッズの購入個数制限を公式SNSで発表。転売目的の購入者が「購入制限で貴重」と煽るケースも確認されています。 ポケモングッズ 2024年11月21日、「ポケットモンスター 金・銀」25周年記念グッズが「ポケモンセンターオンライン」で先行販売されましたが、サイトへのアクセス集中で購入が困難に。多くの商品が午前中に売り切れ、フリマサイトで定価の2倍以上で転売される事態が発生しました。「仮想待合室が設けられていなかった」との指摘や不満の声がX(旧Twitter)で相次ぎました。 2.転売がブランド価値へもたらす影響 転売行為は、単に商品が別の消費者に渡るだけでなく、ブランドの健全な運営や顧客との信頼関係に悪影響を及ぼします。ここでは、転売がブランド価値にどのような問題をもたらすのか、主に3つの側面から解説します。 正規顧客の満足度低下 転売行為により、正規の顧客が商品を購入できなくなる状況が頻発します。特に、限定商品や人気商品の場合、転売市場で高値がつけられることで、購入意欲の高い顧客層が正規価格で商品を手に入れられないという問題が顕著です。このような状況は、顧客のブランドへの信頼を損ねるだけでなく、長期的なファンの離脱を引き起こす可能性があります。 ブランドイメージの毀損 転売市場における商品の不当な価格高騰や品質保証の欠如は、ブランドイメージに直接的な悪影響を与えます。例えば、転売品が高額なだけでなく、不良品や偽物が混在している場合、消費者はブランド自体の信用を疑うようになってしまうのです。結果としてブランドが本来持つ「信頼性」や「希少性」が損なわれ、長期的なブランド価値の低下に繋がります。 管理コストの増加 転売対策に取り組めば取り組むほど、事業者側は本人確認システムや転売監視体制の構築に多大なコストが生じるでしょう。直接的な運用コストの増加をもたらすだけでなく、法的対応や顧客対応のリソースを圧迫します。事業者が本来注力すべき商品開発や顧客サービスへのリソースが減少し、ブランドの成長が阻害される可能性があります。 3.転売を直接阻止することは困難 転売行為を完全に防ぐには、複雑な要因が絡み合い、現実的に非常に難しい状況です。以下の3つの要因がその主な理由です。 法規制の限界 転売行為そのものを違法とする法律は多くの国で整備されておらず、特に国外での転売行為やオンラインでの匿名取引に対しては法的な規制がほぼ及びません。 ・匿名性の高い取引:オークションサイトやCtoCプラットフォームでは、売り手と買い手が匿名でやり取りするため、規制が困難です。・国境を越えた取引:国外での転売は国内法の適用が難しく、事実上取り締まることができません。 法的な枠組みだけでは、転売行為の抑止には限界があるのが実情です。 技術的対策の限界 多くの事業者が本人確認や販売履歴追跡などの技術的な対策を導入していますが、これらにも限界があります。...
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深刻化する転売問題の背景を徹底解説:効果的な多重アカウント対策とは?
チケット不正転売禁止法違反による摘発が相次いでいますが、その取り締まりには法的な限界と技術的な課題が存在します。この記事では、不正転売の背景と、その対策について詳しく解説していきます。 1.高額転売の摘発続々と チケット不正転売禁止法が2019年に施行されたにもかかわらず、転売は依然として社会問題であり続けています。実際に起きた不正転売の事件を見てみましょう。https://www.bengo4.com/c_1009/n_17581/50代男性が「ハロー!プロジェクト」のライブチケットを転売し、チケット不正転売禁止法違反の疑いで書類送検された例です。ライブチケット2枚を転売サイトに出品して、男女2人にそれぞれ2万円ずつ、定価の2倍以上で転売しました。 https://news.yahoo.co.jp/articles/d188f844d01ceec7df7a108c2f7eb5903ec395e9次の事例では、男性2人が旧ジャニーズ事務所のアイドルグループ「ジャニーズWEST」の約8,000人分のファンクラブアカウントを作成し、コンサートチケットを不正に入手して転売したものです。このようなニュースは日々報道がなされ、枚挙にいとまがありません。 2.法的な取り締まりの限界 チケット不正転売禁止法とは? 摘発事例として紹介した「ダフ屋行為」を取り締まる条例は、以前から各都道府県で制定されていました。2019年6月14日には「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(以下「チケット不正転売禁止法」※通称)が施行され、インターネット上での高額転売も禁止されました。 「チケット不正転売禁止法」は、国内で行われる映画、音楽、舞踊などの芸術・芸能やスポーツイベントのチケットに関する法律です。この法律では、「特定興行入場券」と呼ばれる特別なチケットの不正転売を禁止しています。 「特定興行入場券」とは、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示された座席指定等がされたチケットのことです。 チケット不正転売禁止法で禁止される行為は主に次の2つです。 特定興行入場券(チケット)を不正に転売すること 不正転売を目的として、特定興行入場券(チケット)を購入すること 悪意のある転売を見極める難しさ 悪意のある転売なのか、それともたまたま事情によりチケットを手放さざるを得ないのかを見極めることは非常に困難です。例えば、同一人物が複数のアカウントを使用して高額で何度も商品を販売する場合、不正転売に該当する可能性が高いですが、一回限りの販売ではそうとは限りません。 また、消費者サイドの問題として、高額でも商品を購入する人がいるため、市場が成立してしまっているという問題も存在します。不利益を被ったと被害を訴える人が少なく、転売の問題が表面化しにくい状況が出来上がっているのです。 運営サイドでは、転売問題へ厳格に対応する守りのシステムや人的リソースにコストを投じることには消極的になりがちで、全てを取り締まることは現実的ではありません。 不正転売者、消費者、運営者、それぞれの思惑が絡み合い、転売市場は拡大し続けています。 3.技術的な取り締まりの限界 多重アカウント登録が可能な理由 1人で複数のアカウントを取得できてしまうことが、不正転売の温床となっています。どのような抜け道が存在しているのか一例を紹介していきます。 架空の個人情報での登録多くのシステムでは、名前、住所、電話番号、メールアドレスといった基本的な個人情報を入力するだけでアカウントを作成可能です。情報が本物であるかどうかを厳密に確認するプロセスが脆弱で、名前や住所、電話番号が架空のものであっても登録が通ってしまうため、同一人物が異なる情報を使って複数のアカウントを作成できる場合があります。 フリーメールサービスの利用インターネット上にはGmailやYahoo!メールなどのフリーメールサービスが多数存在し、これらを利用すれば新しいメールアドレスを何度でも作成できてしまいます。フリーメールアドレスは匿名性が高く、誰が作成したかを追跡することが困難です。 使い捨てSMSサービスSMS認証を採用しているシステムでも、使い捨て電話番号サービスを利用すれば複数のアカウントを作成可能です。インターネット上で簡単にアクセスでき、一時的に有効な電話番号が提供されます。不正転売者はこの番号を使って認証コードを受け取り、複数のアカウントを作成することができるのです。 本人確認手段の限界 多重アカウント登録への抜け道を防ぐことはなぜ難しいのでしょうか。ここでは技術的な観点から、限界点について深堀りしていきます。 メール認証の課題メール認証は、ユーザーが提供したメールアドレスに認証コードを送信し、そのコードを入力させることで本人確認を行う方法です。しかし、インターネット上には多数のフリーメールサービスが存在し、同一人物が異なるメールアドレスを使って何度でもアカウントを作成することが可能です。 SMS認証の課題SMS認証では、ユーザーが提供した電話番号に認証コードを送信し、そのコードを入力させることで本人確認を行います。市場には使い捨ての電話番号サービスが存在するため、電話番号を持っていないユーザーでも複数のアカウントを作成することが可能です。同じ電話番号を使い回すこともできるため、SMS認証も完全な解決策にはなり得ません。 二要素認証の課題二要素認証は、通常のパスワードに加えて、もう一つの認証要素を使用することでセキュリティを強化する方法です。導入コストが高く、ユーザーの利便性が低下しがちです。特に、スマートフォンを持っていないユーザーや技術に不慣れなユーザーにとっては利用が難しい場合があります。 不正検知の限界とコスト 不正行為は常に進化を続けています。不正検知システムも、不正行為の進化に合わせて絶えずアップデートが必要ですが、全ての不正行為を100%検知することは現実的ではありません。...
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