コラム

公的個人認証(JPKI)とは?仕組み、最新動向、課題を詳しく解説
政策 認証
2025/01/10

公的個人認証(JPKI)とは?仕組み、最新動向、課題を詳しく解説

近年、フィッシング詐欺やなりすましなど、インターネット上の不正行為が増加し社会問題となっています。そこで注目されているのが、マイナンバーカードに格納されている電子証明書を利用する公的個人認証(JPKI)です。本記事では、JPKIの仕組みや最新動向を解説するとともに、実効性や課題についても掘り下げてご紹介していきます。 1.公的個人認証(JPKI)の最新動向 公的個人認証とは 公的個人認証(JPKI)は、インターネット上で本人認証を安全かつ確実に行うためのシステムです。行政手続きやオンラインサービスでの認証が効率化され、不正アクセスや情報漏洩のリスクを軽減します。紙媒体で行われていた申請や手続きをオンライン化することも可能となり、利便性が向上するだけでなく、手続きの透明性や正確性も高まります。 JPKIでは、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を使い、利用者が暗証番号を入力することで本人認証を行います。公開鍵暗号方式が採用され、「公開鍵」と「秘密鍵」というペアが用いられます。 公開鍵はシステム側で使用される一方、秘密鍵はICチップ内に厳重に保管され、外部からアクセスできません。認証時にはこの2つが連携して動作し、不正アクセスやデータの改ざんを防ぐ仕組みが実現されています。 基本的な使い方 公的個人認証(JPKI)を利用するには、初期設定が必要です。まず、市区町村の窓口でマイナンバーカードを発行する際に、カード内のICチップに電子証明書を登録します。この際に、署名用と利用者証明用それぞれの暗証番号を設定します。署名用には6~16桁、利用者証明用には4桁の暗証番号が必要です。 利用環境に応じて、カードを読み取るためのICカードリーダーやNFC対応スマートフォンを準備。一部のスマートフォンでは専用アプリのインストールが求められる場合もあります。 利用時には、対応するウェブサービスやアプリを開き、マイナンバーカードをカードリーダーやスマートフォンにセットします。画面の指示に従い、設定した暗証番号を入力することで、電子証明書が読み取られ、本人認証が完了。 初期設定を終えれば、以降の利用は暗証番号の入力だけでスムーズに進められます。 最新動向について 公的個人認証(JPKI)の利用に必要となるマイナンバーカードは、普及が着実に進んでいます。総務省の発表によると、保有率は人口の70%を超えており、健康保険証としての利用が開始されたことは、マイナンバーカードの普及をさらに後押しする要因となっています。 また、地方自治体や政府による行政手続きのデジタル化が進み、住民票や戸籍謄本のオンライン取得、電子申告(e-Tax)など、JPKIが必要とされるシーンが増加。銀行口座の開設やクレジットカード申し込みなど、民間サービスでの利用も増え、行政以外の場面でもJPKIが身近な存在になりつつあります。 2024年5月には、Appleが2025年春後半から日本でAppleウォレットにマイナンバーカードを追加できる機能を展開すると発表しました。iPhoneユーザーはマイナンバーカードをウォレットに追加し、対面やiOSアプリ上で安全かつ便利に身分証明書を提示できるようになります。 Face IDやTouch IDによる認証と非接触リーダーを活用した仕組みは、物理カードを持ち歩く必要をなくし、利便性を大きく向上させ、JPKIの普及促進にもつながると期待されています。 2.JPKIが抱える課題 マイナンバーカードの普及率やリテラシーの問題 マイナンバーカードの普及率は人口の70%を超えていますが、本人認証の利用において取り残される人々の存在が課題となっています。普及率が90%を超える携帯電話と比較すると、マイナンバーカードが行き渡っていない層が依然として多いのが実態です。 特に、高齢者やデジタル機器に不慣れな層では、カードの申請や暗証番号の設定、電子証明書を活用した認証操作に対する負担感が大きく、複雑で難しいと感じられる場合が少なくありません。また、地方部ではカードの利用機会が限られており、本人認証の必要性や利便性が十分に伝わっていないことが障壁となっています。 これらの課題は、JPKIを活用した本人認証の普及を進める上で大きな課題となっています。 暗証番号が必要 JPKIを利用する際には、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を読み取る必要があります。その際、利用者証明用電子証明書を使用するために設定された「4桁の暗証番号」が求められます。問題となるのが、暗証番号が他人に漏えいした場合のリスクです。暗証番号が漏えいすると、第三者がなりすましを行い、本人になり代わってマイナンバーカードを利用できる可能性があります。また、多くの人が暗証番号として誕生日や簡単な数字の組み合わせを設定しがちであるため、推測されやすいケースも少なくありません。このような設定は特にフィッシング詐欺などの手口に対して脆弱性を持ち、JPKIの安全性に影響を及ぼす懸念があります。 電子証明書の有効期限 JPKIを利用する際に必要な電子証明書には、有効期限が設定されています。マイナンバーカードに格納された電子証明書は、署名用電子証明書が5年、利用者証明用電子証明書が発行から5年またはマイナンバーカードの有効期限までという制限があります。有効期限が切れると、本人認証や署名機能が使用できなくなり、再発行手続きが必要です。 有効期限の存在は、セキュリティを維持するための重要な仕組みですが、利用者にとっては更新手続きの手間や期限切れのリスクが課題となっています。期限を忘れてしまった場合、必要なタイミングで電子証明書が使えなくなる可能性があるため、利用者にとって大きな不便を伴うことがあります。 運用基盤の安定性 JPKIを利用した本人認証では、マイナンバーカードの電子証明書を支える公的個人認証サービスの運用基盤の処理能力と信頼性が重要です。この運用基盤は、電子証明書の発行や有効性確認を行う認証局や関連システムで構成されています。...

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急増するマッチングアプリ詐欺被害への本人認証対策
政策 認証
2024/10/10

急増するマッチングアプリ詐欺被害への本人認証対策

急成長を遂げるマッチングアプリ市場。その利便性を悪用した詐欺被害が深刻化しており、政府も規制強化やマイナンバーカード活用の推進に動き出しています。しかし、従来の本人認証手段では防ぎきれない巧妙な手口が増加しており、新たな対策が必要です。本記事では、最新の詐欺事例、現行の認証技術の課題、事業者に向けた解決策を紹介します。 1.マッチングアプリ詐欺被害の実態 マッチングアプリ市場の拡大 マッチングアプリ市場は、近年急速に拡大しています。株式会社タップルの調査によれば、2021年の市場規模は768億円で、2026年には1,657億円に達するとの予測です。大手アプリ「Pairs」は累計1,500万人以上の会員を抱え、100万人超の利用者がいるサービスも多数存在します。 拡大の背景には、メディアでの露出増加による認知度向上や、新規参入のハードルが低いことが挙げられます。 特に、コロナ禍を機にオンラインでの出会いが広がり、今では若年層に限らず、幅広い年代が利用するようになっています。さらに、低価格な月額料金や無料プランの提供により、手軽に試しやすいことも市場の成長を支えている要因です。 マッチングアプリ詐欺被害の急増 マッチングアプリの利用増とともに詐欺被害が増加の一途をたどっています。 利用者がアプリを通じて知り合った相手と、直接会うことなくメッセージを重ねるうちに、親密さや恋愛感情を抱き、最終的に金銭などを騙し取られる事例が後を絶ちません。「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」によると、こうした被害に遭うのは男性が約6割、女性が約4割で、男女を問わず被害が広がっています。詐欺師がターゲットと接触する手段として最も多く利用しているのはマッチングアプリであり、SNSよりも高い割合を占めています。 さらに、実際に金銭被害に遭わなくても、マッチングアプリを通じてネットワークビジネスや投資の勧誘、金銭の貸し出し依頼を受けるなど、詐欺に巻き込まれそうになるケースも数多く報告されています。 マッチングアプリ詐欺の被害事例 以下は国民生活センターに寄せられた詐欺被害の事例です。オンラインでのやり取りでは相手の身元確認が不十分だとリスクが高く、また相手の足取りを確認しづらいため、問題が発生した際に追跡が困難になる点に留意が必要です。 ケース1 マッチングアプリで日本在住のワイン輸入業者の役員を名乗るイギリス人男性と知り合い、無料メッセージアプリで連絡を取り合うようになりました。彼は「結婚後に資金を出し合って投資しよう」と提案し、ユーザーは暗号資産を130万円、さらに男性に会うために追加で40万円を送金しました。その後、「新型コロナに感染したので会えない」と連絡があり、翌月にも追加の送金を求められ、20万円を送った後、男性との連絡が途絶えました。 ケース2 マッチングアプリで知り合った中国人女性に、FX取引で儲けていると勧められ、彼女の指示でスマホに取引アプリをインストールしました。アドバイザーと称する人物とも連絡を取り、まず10万円、その後さらに200万円を国内の外国人名義の口座に振り込みました。アプリ内で利益が出ているのを確認し、出金を依頼しましたが、返信が来なくなりました。 2.現状の本人認証における課題 eKYCの課題 マッチングアプリでは近年、eKYC(electronic Know Your Customer、電子的な本人確認)を採用し、アプリ利用者の身元確認を行っています。eKYCは、利用者が身分証明書の写真を提出し、顔認証やAIによる照合を行うことで、迅速かつ効率的に本人確認を完了する仕組みです。 現在のeKYCシステムは、高度な画像解析技術やAIを用いて偽造書類の検出を試みていますが、偽造技術も同時に進化しています。結局のところ、画像そのものは匿名であり本人確認の信頼性がなく、なりすましのリスクを完全に排除することは不可能です。 最近ではマイナンバーカードを含む偽造書類の製造工場が摘発される事例も多く報じられており、高度な偽造書類が市場に出回っています。中にはWebサイトを開設し、偽造書類の作成を請け負う業者まで出てきている始末です。今や誰でも簡単に偽造書類を入手できる時代になっているのです。 政府はマイナンバーカードの活用を推進 2024年9月13日、河野太郎デジタル大臣は、恋愛マッチングアプリでのロマンス詐欺を抑止するため、本人確認にマイナンバーカードを活用するよう働きかける方針を示しました。デジタル庁と警察庁がマッチングアプリ事業者団体に要請し、ICチップ読み取りや公的個人認証サービスの利用で、安全性や信頼性が向上することを強調しました。 ICチップの読み取りに対応するなどすれば、現在よりも安全性は一定程度高まるものの、依然として課題は存在します。 電子証明書には「4桁の暗証番号」が必要  マイナンバーカードの電子証明書は、カード内のICチップに記録されており、オンラインでの本人確認や行政手続きに活用される機能です。これにより、公的個人認証サービスなどを通じて、インターネット上で安全に身元確認が行え、電子申請や証明が可能となります。 電子証明書を利用する際には「4桁の暗証番号」が必要ですが、この暗証番号が漏えいすると、カードの現物が他人に奪われた場合には、悪用されるリスクが生じます。カードを安全に保管することはもちろん、暗証番号は誕生日など簡単に推測されないものに設定し、他人に知られないよう十分注意する必要があります。...

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携帯電話の不正契約防止へ - 総務省、非対面時の本人確認をマイナンバーカードに一本化する案を公表
政策
2024/07/03

携帯電話の不正契約防止へ - 総務省、非対面時の本人確認をマイナンバーカードに一本化する案を公表

近年、特殊詐欺による被害が頻発し、ニュースで目にしない日はないと言っても過言ではありません。こうした事態を受け、政府は2024年6月18日に「国民を詐欺から守るための総合対策」を発表しました。さらに、6月20日には総務省が「不適正利用対策に関するワーキンググループ(第6回)」を開催し、携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認の見直し案を公開しました。本記事では、これらの背景や具体的な対策内容について解説します。 1.携帯電話契約の本人確認、見直しの背景と方向性 詐欺被害が増加している原因のひとつに、他人の個人情報を利用して不正に入手された携帯電話の存在があります。被害の拡大を食い止める手段の1つとして、現在は携帯電話契約時の本人確認の重要性が問われています。実際の詐欺被害の件数推移と事件の例を見てみましょう。 不正入手した携帯電話を通じた詐欺被害の拡大 警察庁によると、SNSを悪用した詐欺被害は今年の1〜4月で2508件発生しており、被害総額は約334億円に上っています。その詐欺行為のほとんどが不正に入手した携帯電話から行われ、1日に約3億円が被害に遭っている計算になります。政府としては、この不正入手経路を断つためにも、マイナンバーカード等による契約時の本人確認手段の厳格化が不可欠と考えています。 出典:SNS型投資詐欺の認知件数と被害額の推移(KYODONEWS)大阪府八尾市議会議員の松田のりゆき氏は、偽造マイナンバーカードによる「SIMスワップ」詐欺の被害に遭いました。SIMスワップ詐欺は、悪意のある第三者が被害者の携帯電話番号を乗っ取り、そのSIMカードを新しいカードに交換する手法です。攻撃者は松田氏が市民相談のためにホームページに公開していた個人情報を使って偽造マイナンバーカードを作成し、それを店側に見せることで勝手に機種変更を行いました。犯人はそのまま電子マネーの不正利用や高級腕時計の購入などを行い、被害額は少なくとも2日間で240万円に達しました。この事件の背景には、マイナカードの目視だけで本人確認のチェックが通ってしまったという問題があります。 本人確認方法に関する見直しの方向性 出典:総務省 「非対面」の本人確認手法はマイナカード一本化へ犯罪収益移転防止法や携帯電話不正利用防止法に基づく非対面の本人確認手法は、原則として、マイナンバーカードの公的個人認証に一本化する方針が打ち出されました。運転免許証などの送信や顔写真のない本人確認書類は廃止されます。一方、住民票の写しなど、偽造・改ざん対策が施された本人確認書類の原本の送付を受ける方法は、一定条件の下で引き続き利用可能です。 総務省の公開資料によると、廃止方針の背景には「精巧に偽変造された本人確認書類が悪用されている実態」という理由があります。写しについても偽造が容易であり、特に非対面では真贋を見破ることが難しいため、廃止する方針で進めると説明されています。 「対面」の本人確認ではICチップ情報の読取りを義務付け対面でも目視による本人確認ではなく、マイナンバーカードなどのICチップ情報の読み取りが義務付けられます。マイナンバーカード「など」に具体的にどのような身分証が含まれるのかは明記されていませんが、ICチップを搭載している免許証やパスポートが有力です。将来的にはICチップ読取りアプリの開発も検討されています。 2.不正契約の実態 現状の携帯電話契約には、不正リスクやコスト面で手続き上の問題がいくつか存在します。マイナンバーカードのIC認証を利用した手続きによってそれらがどのように解消されるのか、またInfront Securityにどのような効果を与えるかについて解説していきます。 非対面での本人確認の課題 非対面認証には主にセキュリティリスクと本人確認の精度に関する問題があります。セキュリティリスクとしては、フィッシング詐欺やスパイウェアによる個人情報の盗難が挙げられます。偽のウェブサイトやメールを使って個人情報を盗まれ、携帯電話の契約に不正利用されてしまうのです。本人確認の精度についても、他人が個人情報を用いて本人になりすますリスクや、提出された書類の真正性を確認する難しさがあります。 ユーザー体験の問題も重要です。非対面認証では、複数のステップや書類提出が必要なため、ユーザーにとって手続きが煩雑になりがちです。高齢者や技術に詳しくないユーザーにとっては、オンライン認証の手続きが難しいことも課題です。 非対面での本人確認において、セキュリティリスクとユーザー体験の向上を同時に実現するためには、高度な本人確認手段が必要となります。 対面での本人確認の課題 偽造書類のリスク対面での携帯電話契約では、運転免許証や健康保険証などが精巧に偽造され、不正に契約されてしまう事例が多数報告されています。店舗スタッフの経験やスキルに依存する本人確認方法では、確認の精度を一定に保つことも難しいのが実態です。特に忙しい時間帯や未経験のスタッフが対応する場合、チェック漏れや不十分な確認が発生しやすくなり、偽造書類による不正契約リスクが高くなりやすい傾向にあります。 時間とコストの増大対面での本人確認は、店舗にとっても顧客にとっても時間とコストがかかります。通常、複数の書類が手続きに必要となりますが、書類の確認や情報の入力には手間がかかり、スタッフの負担は大きいです。繁忙期には長時間に渡って顧客は手続きを待たざるを得ず、顧客満足度が低下しがちです。 プライバシーのリスク対面確認の際に個人情報が漏洩するリスクがあります。顧客が書類を店舗スタッフに提出する際に、周囲の人々に情報が見られる可能性があります。また、スタッフが誤って情報を漏らすこともあります。これらのリスクは、個人のプライバシーや情報セキュリティを脅かす要因となります。 マイナカード確認による効果 マイナンバーカードのIC認証は、携帯電話の不正契約に関連する多くのリスクを効果的に解決し、安全かつ効率的な本人確認を実現します。 1.セキュリティリスクの軽減 マイナンバーカードのICチップには高度な暗号化技術が使用されており、電子証明書が格納されています。偽造書類の使用やなりすましによる不正契約は、ICチップの正当性を確認することで回避可能です。例えば、カードリーダーやNFC対応スマートフォンを使用してICチップを読み取ることで、即座に真偽を確認できる仕組みです。 第三者に見られることなく、電子的に安全に本人確認を行うため、対面確認における個人情報の漏洩リスクも低減されます。 2.ユーザー体験の向上 IC認証を利用することで、手続きの簡素化が期待できます。複数のステップや書類提出が不要になり、スマートフォンやカードリーダーを通じて迅速に本人確認が行えるため、ユーザーの手間が減ります。高齢者や技術に詳しくないユーザーにとっても、比較的ハードルの低い手順です 3.人的エラーの削減...

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本人確認書類の偽造は簡単な時代に?eKYCの問題点と対策について
政策 認証
2024/06/03

本人確認書類の偽造は簡単な時代に?eKYCの問題点と対策について

2024年4月、日本信用情報機構(JICC)が偽造された本人確認書類を用いたなりすましに対して信用情報を開示してしまったインシデントは、近年急速に普及が進むオンライン上での本人確認、eKYC(electronic Know Your Customer)の課題を浮き彫りにしました。本記事では、eKYCの基本的な仕組みから限界点、そしてその対策までを分かりやすく解説していきます。 スマホアプリを使ったなりすましを見破れずに情報開示 2024年4月1日、日本信用情報機構(JICC)は、偽造された本人確認書類を使用した申し込みに対して個人信用情報を開示したとして謝罪しました。スマホアプリを使ったなりすましに対して16件の開示が確認されています。 2024年3月の最終週に、偽造書類が使われた数件の申し込みを見抜き情報開示を防ぐことができました。ところが、過去の申し込みを遡って調査した結果、16件の偽造書類による情報開示が判明。不正開示された情報には、本人の特定や契約に関する情報が含まれていました。 2024年3月28日に不正が発覚し、JICCはサービスを停止。4月5日に機能改修を行い再開しました。再開後はクレジットカードによる本人認証を導入し、対応できないユーザーには郵送で対応するといった解決策に至っています。  eKYC(electronic Know Your Customer)とは? スマートフォンの普及に伴い、オンライン上での本人確認へのニーズが高まっています。ここでは、代表的な手段として普及が進むeKYCの基本的な仕組みと、そのメリットを解説していきます。 eKYCの本人確認の仕組み eKYCの本人確認手続は、大きく「身元確認」と「当人認証」で構成されています。 身元確認では、本人特定事項(氏名、住所、生年月日など)が記載された証明書(免許証、パスポート、健康保険証など)を提示し、その住所に実際に居住していることを確認します。これにより、その人物の身元が証明されます。 当人認証は、提示された証明書に記載されている人物が、実際に契約を行う本人であることを確認するプロセスです。eKYCでは生体認証と呼ばれる仕組みを利用しており、身分証に印刷された顔写真と契約者の顔を見比べることで、本人であることを確認します。 スマートフォンのカメラを使って本人確認書類と契約者の顔をリアルタイムで撮影することで、身元確認と当人認証の両方を同時に実行する仕組みです。 eKYCのメリット eKYCのメリットは、紙ベースの本人確認の仕組みと比較して、本人確認時間の大幅な短縮や人件費の削減を実現できることなどが挙げられます。 AIを活用した認証システムにより、リアルタイムでの本人確認が可能になり、従来の紙ベースのプロセスでは数週間かかる手続きが最短即日で完了します。 例えば、従来の方法では運転免許証のコピーを郵送する手間がかかりますが、eKYCではスマホで身分証明書と顔を撮影してアップロードするだけです。 事業者側でも、紙ベースの本人確認では書類の仕分け、内容確認、データ入力、保管など多くの手作業が必要ですが、eKYCでは作業を自動化・省力化することもでき、ヒューマンエラーのリスクも軽減されます。 eKYCの問題点 eKYCによってもたらさせるメリットは様々ですが、一方で課題も存在します。冒頭に紹介したようなインシデントも発生しており、限界点を理解することが重要です。 偽造書類を見抜く技術的な課題 現在のeKYCシステムは、高度な画像解析技術やAIを用いて偽造書類の検出を試みていますが、偽造技術も同時に進化しています。なりすましのリスクを完全に排除することは不可能です。 最近ではマイナンバーカードを含む偽造書類の製造工場が摘発される事例も多く報じられており、高度な偽造書類が市場に出回っています。中にはWebサイトを開設し、偽造書類の作成を請け負う業者まで出てきている始末です。今や誰でも簡単に偽造書類を入手できる時代になっているのです。 個人情報を保存することによるデータ漏洩リスク eKYCの利用には、個人情報の保存に伴うデータ漏洩リスクが大きな課題として存在します。ユーザーの個人情報や生体データがデジタル形式で保存されるため、不正アクセスやサイバー攻撃の標的になりやすいです。...

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「3Dセキュア2.0」義務化のEC事業者への影響と対策について徹底解説!
3DS・チャージバック 政策
2024/05/28

「3Dセキュア2.0」義務化のEC事業者への影響と対策について徹底解説!

一般社団法人日本クレジット協会は、2024年3月15日に「クレジットカードセキュリティガイドライン5.0」を発表しました。EC事業者に対し「3Dセキュア2.0」の導入を積極的に推奨し、2025年3月までの導入を義務化する方針が明記されています。本記事では、先行する欧州の事例も交えながら、3Dセキュア2.0の導入がEC事業者に与える影響について、メリットとデメリット、そして具体的な対策について説明していきます。 日本クレジット協会が「ガイドライン5.0」を公表 ガイドラインのポイント ▲セキュリティガイドラインにより示された今後の不正利用対策の考え方(出典:クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】改訂ポイント) ガイドライン5.0では、EC加盟店やカード会社、決済代行会社など、事業者ごとに対面取引と非対面取引に分けて、講じるべきカード情報保護対策や不正利用対策が詳細に定められています。 特にEC事業者に対しては、2025年3月末までに3Dセキュア2.0の導入が義務付けられ、カード会員情報の登録や動的パスワードによる認証方法への移行が推奨されています。さらに、新規契約の前に「セキュリティ・チェックリスト」を使用して対策を着実に実行し、その状況を申告することが求められるようになりました。 対応を怠った場合、協会による直接的な罰則規定はありませんが、EC事業者がクレジットカード加盟店の申請を行っても、加盟店契約を締結できないなどの影響があるとみられています。 EC事業者への影響 3Dセキュアの導入により不正注文やチャージバックへの対策が強化され、EC事業者の信頼性向上が期待されます。 一方で、購入時に追加の認証ステップが追加されることで、ユーザーが購入を途中で放棄する「カゴ落ち」が増加し、コンバージョン率の低下が懸念されます。 技術導入に伴うコストも影響の一つです。新しい認証システムを導入するための初期投資や運用コストが発生し、小規模事業者にとっては財務的な負担となる可能性があります。 3Dセキュアの導入にあたっては、セキュリティ強化とユーザー体験のバランス、費用と効果のバランスを取ることが求められ、EC事業者には戦略的なアプローチが求められます。 先行導入した欧州の事例からのインサイト 2018年、ヨーロッパでは「欧州決済サービス指令第2版(PSD2)」の一環として、加盟店に「強力な顧客認証(SCA)」の規制が導入されました。最も使用されているテクノロジーが3Dセキュアです。 ネットショップ担当者フォーラムによる、グローバル決済プラットフォームを提供するAdyen社へのインタビュー記事から、実際に導入された後にどういった影響があったのか紐解いていきます。 やはり、コンバージョン率の低下は発生 3Dセキュアを導入後、約50%の不正利用が減少し、セキュリティを強化したことによるメリットは大きなものでした。 従来のパスワードやIDに加えて、生体認証も利用されるようになっています。結果として、オンラインショッピングの信頼性と安全性が向上し、消費者の買い物頻度や購入単価の増加、さらにはクレジットカードの利用率の向上が見られています。 一方で、導入直後には、やはり平均してコンバージョン率が約1ポイント低下しました。一定期間が経過すると改善し、2~5ポイントほど上昇する業界も中にはありました。セキュリティの強化でオンラインショッピングの信頼が高まったことに加えて、消費者が新しい認証システムに慣れたことが要因と考えられます。 回復には2年の歳月と周辺努力が必要 コンバージョン率の低下については、セキュリティの強化だけが原因ではないという視点を持つことが重要であると説いています。消費者の購買行動はさまざまですので、サイト全体の設計もコンバージョン率に大きな影響を与えます。EC事業者はユーザーの買い物体験全体を見直し、最適化することが必要です。実際に、コンバージョン率を改善した欧州のEC事業者は、包括的な改善に注力しました。 ヨーロッパでは、回復までに約2年の時間を要しましたが、その裏側には「政府の後押し」、「事業者の採用」、「買い物客の受け入れ」という三つの要素があったとされています。3Dセキュア導入によるメリットはある一方、コンバージョン率の回復には長い時間と関係者の努力が求められます。 3Dセキュアでよくある課題と原因 先行する欧州では、3Dセキュアの導入が進む一方で、多くの課題が浮き彫りになりました。ここでは、3Dセキュアの導入に伴うよくある課題とその原因について詳しく解説します。 ・ドロップの発生 認証プロセス中にパスワードがわからない、もしくは認証コードが届かないなどの理由で顧客が購入を中断するケースが多いです。 カート放棄が増加し、結果的に売上に悪影響を及ぼす原因となっています。UI/UXの品質の不十分さや、スマホ操作の難しさがユーザーのストレスを引き起こし、途中で離脱する原因となってしまっていることがあります。 ・不正の見落とし 不正取引を未然に防ぐための3Dセキュアですが、技術的な限界により、一定数の不正を見逃す可能性は依然として存在します。セキュリティ質問やフィッシング警告の多さがユーザーの利用を妨げる一方で、完全な防止には至らないことがあるのです。不正な取引が問題になると、セキュリティ上の隙間が露呈し、顧客の信頼を損なうことにつながります。 ・不正対策オペレーションの増加...

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