アザス・するーぷ約6万件の情報漏えい、漏れたメールアドレスと生年月日で何をされるのかまとめました

アザス・するーぷ約6万件の情報漏えい、漏れたメールアドレスと生年月日で何をされるのかまとめました

2026年9月18日、JGC Digital株式会社は、データの集計・分析に使っていたBIツール「Metabase」の脆弱性を悪用した不正アクセスを受け、お客様の情報の一部が取得されたと公表しました[1]。対象は、建設現場向けサービス「アザス」が約4万件、衣類回収サービス「するーぷ」が約2万件のアカウントです。パスワードは同社のシステムで管理していないため漏えいはないとしていますが、それで安心とは言い切れません。

「自分のメールアドレスや生年月日で、これから何をされるのか」。「会社として、どこから手を打てばよいのか」。この記事では、その2つに答えるために、漏れた情報が悪用されうる場面と、2つのサービスの中で狙われやすくなった場所を、公開情報から整理しました。事故の経緯は報道でも扱われているため、短くとどめます。

この記事の要点

  • 漏れた項目にメールアドレスが入っています。「アザスポイント」「するーぷのポイント」を口実にした、名前や所属入りの偽メールに注意が要ります。
  • 利用者がまずやるとよいのは、届いたメールのリンクからではなく、アプリや公式サイトを自分で開いて確かめることです。
  • 会社側がまず見直したいのは、メールで届くログイン情報やリンクに頼っている所と、社内ツールそのもののログインです。

なお、本記事は公表文や公式サイト、アプリストアの説明など、公開情報だけをもとにしています。ログイン画面を実際に試すような調査はしていません。確認できなかった点は「確認できず」と書いています。

何が起きたか(要約)

公表文[1][2][3]によると、概要は次のとおりです。

項目 内容
検知 9月16日に異常を検知し、同日中に不正アクセスの経路を遮断
公表 9月18日
原因 社内のBIツール「Metabase」の脆弱性を悪用した不正アクセス
件数 アザス 約4万件/するーぷ 約2万件(いずれもアカウント数。1人で複数のアカウントを持つ場合があり、実際の人数はこれより少ない見込みとしている)
アザスで取得された項目 氏名、生年月日、性別、メールアドレス、勤務年数、言語、役割、体温情報、所属、元請または一次請企業、プロジェクト名、プロジェクト期間、称賛回数
するーぷで取得された項目 メールアドレス、生年月、性別、郵便番号、子供の有無、職業、年収(任意)、興味ある事(任意)
含まれないとされる情報 パスワード(同社のシステムで管理していないため)
対策 Metabaseの利用終了とより安全な環境への移行、利用ポリシーの厳格化

同社は、対象者には登録のメールアドレスあてに順次個別の連絡をするとしています。あわせて、同社を装う不審なメールや電話に注意するよう呼びかけ、メールや電話でパスワードや決済情報を尋ねることはないとしています[1]。

漏れた情報で、何ができてしまうか

今回の特徴は、メールアドレスに「その人らしさ」が付いて出たことです。アザスでは氏名と所属・元請企業・プロジェクト名、するーぷでは郵便番号や職業、子供の有無まで並んでいます。

漏れた情報 攻撃者にとっての使い道(一般的に考えられるもの)
メールアドレス+氏名 名前入りの偽メールを送れる。「アザスポイントの交換期限」など、本物のサービス名を使った連絡に見せやすい
所属・元請企業・プロジェクト名 「〇〇現場の件で」と、実在の現場や取引先を名乗るメールの材料になる。現場の関係者は多層で、送り主を確かめにくい
メールアドレス+生年月日(生年月)+性別 「本人であることの確認」によく使われる組み合わせ。これだけで本人と見なす窓口があれば、なりすましの材料になる
郵便番号・職業・年収・興味ある事 相手に合わせた広告や勧誘、投資話などの文面を作る材料になる
するーぷの利用者であること 「ポイントが失効します」「クーポンを受け取ってください」といった偽の案内の、もっともらしい口実になる

パスワードが含まれていない点は、不幸中の幸いです。ただ、メールアドレスが知られた以上、「メールに届いたリンクやコードを信じる」こと自体が狙われます。本物の個別連絡もメールで届くため[1]、偽の連絡と見分けるのは簡単ではありません。

この2つのサービスで認証が使われる場所

公式サイトとアプリストアの説明から、認証が関わる場所を並べました。

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
アザスの監督のログイン 初回は「メールで届くログイン情報」でログインする[4] 監督のメールアドレスが漏れていた場合、ログイン情報の案内を装う偽メールの口実になる 高
アザスの作業者のログイン 現場で配られるQRコードからログインする[4]。その後の確かめ方は確認できず 氏名・所属・プロジェクト名がそろって漏れており、作業者を名乗る問い合わせに使われうる 要確認
アザスポイントの景品交換 ポイントを手袋や飲み物などの景品と交換できる[4]。交換時の確認方法は確認できず 交換や期限の案内を装う偽メールの口実になる 中
アザスの管理画面 契約者向けのログイン画面がある[2]。方式は確認できず 元請企業・プロジェクト名が漏れており、契約企業の担当者を狙う連絡の材料になる 中
するーぷのアプリ 位置情報とQRで回収ボックスを開け、ポイントをためる[5]。会員登録・ログインの方式は確認できず メールアドレスがアカウントと結びついている[5]。ポイントや有料プランを口実にした偽メールに注意が要る 中
するーぷのポイント・クーポン ポイントを寄付やクーポンに使える[6]。交換時の確認方法は確認できず 乗っ取られると、ためたポイントを使われる可能性がある 中
電話の窓口 するーぷはフリーダイヤルのカスタマーセンターがある[6]。どの項目で本人確認しているかは確認できず もしメールアドレス・生年月日・郵便番号が合えば本人と見なす運用なら、漏れた情報と重なる 要確認
社内のBIツール 今回の入口。公表文では脆弱性の悪用とされている[1] 社員のログインが破られたとは書かれていない。ただし分析用のツールに顧客データがまとまっていた 要確認

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社がまず見直すとよい所(優先順)

公表文では、Metabaseの利用終了と安全な環境への移行、利用ポリシーの厳格化が挙げられています[1]。一方で、利用者のログインや本人確認の方法を変えるといった記載はありませんでした。認証の観点からは、次の順で見直すことが考えられます。

  1. メールで届くログイン情報やリンクに頼っている所を洗い出す。アザスの監督の初回ログインのように、メールが入口になっている場所は、偽メールと同じ道を通ります。メール以外で「本人が持っている物」を確かめる手段を足せないか検討できます。
  2. 電話やメールの窓口の本人確認から、今回の情報を外す。「メールアドレス・生年月日・郵便番号が合えば本人」という扱いになっていないか、運用の見直しから始められます。
  3. 顧客データに触れる社内ツールのログインを、社員の側でも強める。今回の入口は脆弱性とされていますが、分析用のツールは多くのデータをまとめて見られる場所です。誰がどこから入れるのかを、改めて確かめる価値があります。

あわせて、個別連絡のメールに何が書かれ、何が書かれないのか(リンクを付けるか、何を尋ねないか)を先に伝えておくと、偽の連絡との見分けを助けられます。

認証の観点から:「メールが届く」と「その電話を持っている」は違う

今回はパスワードが漏れていません。それでも安心しきれないのは、メールアドレスが知られたことで、「メールに届いたものを信じる」確かめ方が偽メールと同じ道に乗ってしまうからです。

一方で、今回の漏れた項目に電話番号は含まれていません。「その電話番号の回線を実際に持っているか」は、メールアドレスや生年月日を知っていても代わりがききません。認証の土台を「知っているか」「メールが届くか」から「持っているか」へ移すことが、漏えいの後にこそ効いてくる対策です。

SMSで届くワンタイムパスワードも、「持っているか」を確かめる方式の一つです。ただし米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を「制限付き(restricted)」の手段と位置づけています[7]。禁止ではありませんが、それだけに頼りきらない設計が求められています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

環境の移行に合わせて、ログインの確かめ方も見直す方法については、お気軽にご相談ください。

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出典

  1. JGC Digital株式会社「不正アクセスによる個人情漏えいに関するお知らせとお詫び」(2026年9月18日)https://jgc-digital.com/topics/topics-3049/
  2. アザス お知らせ(2026年9月18日)https://sales.azas-token.com/news/news-711/
  3. するーぷ お知らせ(2026年9月18日)https://sales.suloop.biz/news/2624/
  4. アザス 商品紹介(2026年10月15日取得)https://sales.azas-token.com/service
  5. App Store「するーぷ」説明文・App のプライバシー(2026年10月15日取得)https://apps.apple.com/jp/app/id6474016414
  6. するーぷ よくある質問(2026年10月15日取得)https://sales.suloop.biz/faq/
  7. NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html
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