「届いていない」と言われたら、確かめる術はあるか
ある飲食店オーナーが、デリバリーアプリ経由の注文に頭を抱えていました。 注文どおりに調理し、配達員に渡した。にもかかわらず、数時間後に「商品が届いていない」と返金申請が入る。月に何件かなら泣き寝入りも仕方ない、と諦めていたところ、同じ氏名で住所だけが少し違う注文が、別アカウントで何度も入っていることに気づいたといいます。
これはフードデリバリー業界に限った話ではありません。後払い決済を使ったECや、無料トライアルを設けるサブスクリプション事業でも、同じ構造の不正が日常的に発生しています。
そして共通する手口は、ひとつに集約されます。 「新規アカウントを大量に作る」という、極めて単純な攻撃です。
本記事では、業界調査が示す不正の実態と、なぜ既存の本人確認手段が突破されてしまうのか、そして「電話番号」という意外な角度からの解決策を整理します。
1. 【海外事例】フードデリバリー詐欺の「48%は返金詐欺」だった
オンライン不正検知ベンダーのSift社が公表した調査レポートによれば、フードデリバリープラットフォームで発生している消費者詐欺のうち、約48%が「返金詐欺」に分類されるとされています。
(出典:Business Insider Japan掲載のSift社レポート言及記事、2025年2月26日 https://www.businessinsider.jp/article/2503-food-delivery-customers-fraud-asking-for-refunds-orders-they-got/ )
返金詐欺とは、商品が正常に配達されたにもかかわらず、「届いていない」「中身が違った」と虚偽の申請を行い、返金や代替品の発送を受け取る行為を指します。記録上は注文・配達ともに完了しているため、店舗側からは反証が難しく、結果として泣き寝入りに近い処理が積み上がっていきます。
レポートが指摘する手口の特徴は、二つあります。 ひとつは「複数のメールアドレスを使い分け、新規アカウントを次々と作成する」こと。もうひとつは「初回限定クーポンや配送無料特典を使い回し、実質的に半額以下で食事を入手する」ことです。返金詐欺と無料クーポン乱用は、同じ人物が同じ手口で連続的に行うケースが多く、業界全体で問題視されています。
2. 後払い決済でも進む「なりすまし注文」
同じ構造の問題は、ECサイトの後払い決済領域でも観測されています。
NP掛け払いやNP後払いを提供するネットプロテクションズ社の運用案内には、第三者が架空の氏名・住所・電話番号を入力し、本人になりすまして商品を購入する事例について、注意喚起と対応プロセスが整理されています(出典:株式会社アスターリンク「NP掛け払い・NP後払いによるいたずら(なりすまし)」
https://www.aster-link.co.jp/posts/np-kakebarai/
後払い決済の構造的な弱点は、購入時点で支払いが発生しないため、本人確認の精度が「氏名・住所・電話番号」程度にとどまる点にあります。クレジットカードのように与信審査やカード情報の照合プロセスが入らないため、「他人の住所や架空の住所を登録し、転送サービスや営業所止めで荷物を受け取る」といった手法が成立してしまいます。
参考までに、日本クレジット協会が2026年3月に公表したデータでは、2025年通年のクレジットカード不正利用被害額は510.5億円で、このうち番号盗用による被害が475.4億円を占めました。番号盗用比率は約93%です。
(出典:日本クレジット協会発表、ECのミカタ記事 https://ecnomikata.com/ecnews/marketing/49820/ )
被害総額は11年ぶりに前年比減少となりましたが、番号盗用-つまり「なりすまし型」の構造そのものは、依然として9割以上を占め続けています。
カード決済でも、後払いでも、フードデリバリーでも。 不正の入口は、いずれも「アカウントを新しく作る」という同じ動作に集約されているのです。
3. 共通する手口は「新規アカウントの大量作成」
不正のパターンを並べてみると、表層の手口は違っても、根底のメカニズムは同じです。
・メールアドレスを使い分け、新規ユーザーとして次々に登録する
・入手したカード番号や個人情報を、複数のアカウントに割り当てる
・初回特典・無料クーポン・トライアル価格を、何度も適用させる
・返品・返金・キャンセル申請を、各アカウントから散発的に送る
事業者側の視点で見ると、被害は「個別の不正注文」として計上されますが、攻撃者側から見れば「ひとつのオペレーション」です。一人の人物が複数のアカウントを回しているケースが多く、業界レポートでもこの構造が繰り返し指摘されています。
ここで多くの事業者が直面するジレンマがあります。 不正を止めようと審査を厳格化すれば、正規の新規顧客まで離脱します。3Dセキュアの導入時にカゴ落ちが発生する現象。
業界では10〜30%の離脱が報告されると、根本的には同じ構造です。
(出典:ネットショップ担当者フォーラ https://netshop.impress.co.jp/node/12732 )
「不正を止めたいが、CVRも落とせない」。 この二律背反が、不正対策の本質的な難しさです。
4. Infront Securityが提示する「電話番号」という制約
ここで切り口を変えて考えてみます。 新規アカウントの大量作成を止めたいのであれば、止めるべきは「アカウント」ではなく、その背後にある「使い回せない何か」を要件にすればいい。
Infront Securityが採用しているのは、まさにこの発想です。 電話番号ベースの本人認証によって、アカウント作成時およびログイン時に「同じ人が複数のアカウントを取りにくい」構造を作ります。電話番号は使い回せる識別子ではない、という物理的な制約を、不正対策の入口に持ち込む発想です。
電話番号が「使い回せない」と言える根拠は、技術的にも制度的にも明確です。
第一に、音声通話の回線契約には、携帯電話不正利用防止法に基づき、公的証明書による本人確認が必須となります。データSIMでは取得できない、本人確認義務のある回線です。
第二に、いわゆる「トバシ携帯」や盗難端末で大量に番号を取得することは、現実にはコストが高く、不正利用の発覚時には発信記録から追跡が可能です。
第三に、認証経路がインターネット網ではなく、通信キャリアが管理する電話網です。電話網はハッキングの対象になりにくく、フィッシング詐欺サイトは「電話回線そのもの」を持っていないため、認証を偽装することができません。
つまり電話番号は、メールアドレスのように「いくらでも作れる識別子」ではない。 新規アカウントの大量作成を、入口で止めるための物理的な制約として機能します。
5. 「ワンタップ1秒」で正規顧客の通過率は落とさない
もうひとつの論点は、認証強化と顧客体験の両立です。
Infront Securityの認証フローは、ユーザー側のアクションを最小化する設計になっています。
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ユーザーがログイン画面や注文確認画面で、認証ボタンをワンタップ
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スマホから指定番号へ自動で1コール発信(通話料無料、所要時間は約1秒)
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発信者番号と端末情報をサーバー側で照合し、本人確認が完了
二度目以降、同じ端末からのアクセスであれば、端末認証のみで完了します。ワンタップすら不要です。
SMS認証と比較すると、構造の違いがはっきりします。SMSはコード送信から入力まで平均3分、平均試行回数は4回(送信・再送信を含む)と言われ、企業側にはSMS送信コストが累積していきます。Infront Securityはユーザー発信のため、企業側の通信コストはゼロ。所要時間は1秒です(数値はいずれも自社調べ・正本記載値)。
「3分の壁を1秒に」これがInfront Securityの掲げるコアバリューであり、不正対策と顧客体験を同じ動作の中で解決する設計です。
6. 「接点不正遮断パッケージ」が想定する事業者像
Infront Securityでは、用途に応じて3つの戦略パッケージを用意しています。本記事のテーマ フードデリバリーや後払いECにおける「新規アカウント大量作成」「なりすまし注文」「返金詐欺」への対応は、Bパッケージ「接点不正遮断パッケージ」が中心となります。
このパッケージが想定するのは、次のような事業者です。
・なりすまし注文・複垢・悪用による損失が、無視できない水準まで積み上がっている
・不正対策の強化を進めるたびに、正規顧客の通過率が落ちてCVが下がっている
・運用ルールが複雑化し、CSや与信担当の判断負荷が高止まりしている
これらの構造的な痛みに対し、入口で「接点の確からしさ」を上げ、不正の踏み台を減らすというのが、パッケージの基本思想です。正規顧客は通過率を維持したまま、不正だけを止める。アカウント作成・ログイン・決済確認といった各接点で、同じ電話番号認証を埋め込む形で実装します。
おわりに:「アカウントを増やせない」という入口設計
返金詐欺48%、番号盗用93%、3DSカゴ落ち10〜30%。 業界レポートに並ぶこれらの数字は、いずれも「アカウント」「決済」「認証」という別々の問題に見えて、根は同じです。「使い回せる識別子で人を判定している」ことが、すべての構造の出発点になっています。
メールアドレスは使い回せます。クレジットカード番号も漏洩すれば使い回せます。 しかし、本人確認義務のある音声通話回線の電話番号は、簡単には使い回せません。
Infront Securityが目指しているのは、「認証」を一段階強くすることではなく、「接点保証」――誰が、どこから、どの端末で接点を持っているのかを1秒で確かめる仕組みを、社会インフラとして組み込んでいくことです。
新規アカウントの作成段階で「同じ人かどうか」を見極められる事業者と、見極められない事業者の間には、5年後には大きな差が生まれているはずです。
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本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。製品仕様および料金体系の最新情報は、お問い合わせ時にご確認ください。