郵便局アプリ・ゆうID 69件の情報漏えい、漏れた住所録と送り状の情報で何をされるのかまとめました

郵便局アプリ・ゆうID 69件の情報漏えい、漏れた住所録と送り状の情報で何をされるのかまとめました

2026年9月29日、日本郵政株式会社と日本郵便株式会社は、「郵便局アプリ」への外部からの不正アクセスにより、ゆうIDおよび郵便局アプリに関連するお客さま情報69件(19名分)が不正に取得されたことが判明したと公表しました[1]。取得された情報は人によって異なり、ゆうIDの会員情報に加えて、住所録に登録されていた相手の情報や、アプリで作った送り状の情報まで含まれるとしています。不正に利用された形跡は確認されていないとしていますが、それで安心とは言い切れません。

「自分の住所や、送った荷物の情報で、これから何をされるのか」。「会社として、どこから手を打てばよいのか」。この記事では、その2つに答えるために、漏れた情報が悪用されうる場面と、ゆうIDの中で特に狙われやすくなった場所を、公開情報から整理しました。事故の経緯は多くの報道が扱っているため、短くとどめます。

この記事の要点

  • 件数は少なくても、追跡番号や品名まで入った「本物そっくりの配達の知らせ」を作れる情報が漏れました。住所録や送り状に名前があるだけの、アプリを使っていない人の情報も、取得された情報に含まれます。
  • ゆうIDを使っている人は、2段階認証(ログイン時の追加の確認)を設定しておくと安心です。
  • 会社側がまず見直したいのは、生年月日とメールアドレスで始まるパスワード再設定と、住所の変更や転居届のように「物の行き先」が変わる手続きです。

なお、本記事は公表文や公式のよくあるご質問など、公開情報だけをもとにしています。アプリやログイン画面を実際に試すような調査はしていません。確認できなかった点は「確認できず」と書いています。

何が起きたか(要約)

公表文[1]によると、概要は次のとおりです。

項目 内容
対応 郵便局アプリへの外部からの不正アクセスがあり、2026年9月25日22時30分ごろ、ゆうIDと郵便局アプリの緊急メンテナンスを実施
再開 必要な調査と対策を行ったうえで、9月26日にサービスを再開
件数 お客さま情報69件(19名分)が不正に取得されたことが判明
取得された情報①ゆうID会員情報 氏名、住所、生年月日、性別、電話番号、メールアドレス、お勤め先情報・家族状況・住所録登録情報(登録している場合のみ)
取得された情報②住所録 ゆうIDの住所録に登録されていた相手の氏名・住所、企業名・電話番号・メールアドレス(登録している場合のみ)
取得された情報③送り状 差出人と受取人の氏名・住所・電話番号など(受取人の電話番号、企業名、メールアドレスは登録されている場合のみ)、追跡番号、品名、発送・配達予定情報
原因 侵入の経路や手口は、公表文には書かれていません
二次被害 不正に利用された形跡は確認されていないとしています

該当する人には、準備が整い次第、書面などで個別に連絡するとしています[1]。

漏れた情報で、何ができてしまうか

今回の特徴は、本人の情報だけでなく「誰に、何を、いつ送ったか」という荷物の情報が漏れたことです。パスワードについては、公表文の取得された情報の一覧に含まれていません[1]。

漏れた情報 攻撃者にとっての使い道(一般的に考えられるもの)
追跡番号+品名+配達予定+受取人の氏名・住所(電話番号は登録されている場合) 本物の追跡番号と品名を書いた「お荷物のお届けについて」という偽SMS・偽メールを送れる。送り主を偽ったSMSが、本物と同じ画面(スレッド)に並んで表示される手口も知られています[10]
住所録の相手の氏名・住所(電話番号・メールアドレスは登録されている場合) アプリを使っていない家族や知人にも、名前入りの偽の連絡を送れる。漏えいの影響が登録者の外に広がる
氏名+生年月日+メールアドレス 「知っていれば本人らしく見える情報」がそろう。後で触れるとおり、ゆうIDのパスワード再設定の受付で入力する項目と重なる[6]
お勤め先情報・家族状況 勤め先や家族を名乗る連絡に説得力を持たせる材料になる
メールアドレス 他のサービスで漏れたパスワードと組み合わせて次々に試す「パスワードリスト攻撃」の材料になる

大事なのは、追跡番号や品名は「本人とやり取りした人しか知らないはずの情報」として受け取られやすいという点です。知っている情報が正しいほど、偽の連絡は見分けにくくなります。

このサービスで認証が使われる場所

ゆうIDは、日本郵政グループのさまざまなサービスに共通で使えるIDです[2]。公開情報で確認できた範囲で、認証が関わる場所を並べました。

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
ゆうIDのログイン(郵便局アプリ・Webサイト共通) ID(メールアドレス)とパスワード。2段階認証(認証アプリ、またはSMS/メールで届く6桁のコード)を利用者が設定できる[3][4]。パスキーも設定でき、設定後もIDとパスワードでのログインは可能[5]。全員に必須かどうかは確認できず IDにあたるメールアドレスが漏れた。2段階認証を設定していない人が、他のサービスと同じパスワードを使っていれば入られる可能性がある 高
パスワード再設定 ログインIDのメールアドレスと生年月日を入れると、そのメールアドレスあてに再設定のリンクが届く[6] 入力する2項目はどちらも今回漏れた。リンクはメールに届くため、それだけで再設定はできないが、メールを乗っ取られた人は守れない 高
2段階認証の予備の手段 設定時に10個のリカバリーコード(予備の認証コード)が発行される[4] 漏れた情報との直接の関係は確認できず。リカバリーコードを本物そっくりの画面で入力させる手口には注意が要る 中
新規登録 携帯電話番号の入力が必須[8]。登録時にその番号を実際に確かめる手順があるかは確認できず 電話番号が漏れた人の名前で、別のIDを作られないかは確認できず 要確認
e転居(郵便物の転送の届け出) ゆうIDでログインし、届出者のオンライン本人確認(マイナンバーカードなど)を行う。そのゆうIDで本人確認を済ませていれば、この手順は省かれる[7] ログインさえ通れば、物の行き先を変えられる手続きにつながる。本人確認済みのIDが乗っ取られた場合が要注意 高
送り状作成・住所録・配達依頼 ゆうIDでログインして使う[1][2] 乗っ取られると、住所録の相手の情報や送り状の履歴をさらに見られる可能性がある 中
問い合わせ窓口での本人確認 どの項目で本人確認しているかは公開されておらず、確認できず もし氏名・住所・生年月日・電話番号が合えば本人と見なす運用なら、今回漏れたのはまさにその項目 要確認

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社がまず見直すとよい所(優先順)

公表文では、必要な調査と対策を行ったうえでサービスを再開し、再発防止に努めるとしています[1]。一方で、ログインやパスワード再設定の確認方法を変えるといった記載はありませんでした。認証の観点からは、次の順で見直すことが考えられます。

  1. パスワード再設定の受付から、漏れた項目を頼りにする部分を減らす。今の受付で入力するメールアドレスと生年月日は、今回の対象者については両方とも第三者の手に渡りました。メールのリンクだけで再設定が終わる形だと、メールを乗っ取られた人を守れません。
  2. 「物の行き先」が変わる手続きに、その場で追加の確認を入れる。転居届や登録住所の変更は、乗っ取りの後に最も効く手続きです。一度本人確認を済ませたIDでも、行き先を変える瞬間だけは改めて確かめる、という考え方です。
  3. 本人確認の質問から、漏れた項目を外す。問い合わせ窓口で「氏名・住所・生年月日・電話番号が合っていれば本人」という扱いになっていないか。これは仕組みを作り直さなくても、運用の見直しから始められます。

認証の観点から:「番号を知っている」と「その電話を持っている」は違う

今回漏れたのは19名分ですが、そこには本人だけでなく、住所録や送り状に名前のある相手の電話番号(登録されている場合)も含まれていました。ここで分けて考えたいのは、「電話番号を知っていること」と「その電話番号の回線を実際に持っていること」は別物だという点です。

前者は、もう第三者に知られてしまいました。一方で後者は、情報が漏れても変わりません。ゆうIDは新規登録の時点で携帯電話番号を必須にしています[8]。その番号を「持っているか」を確かめる方向に使えば、漏えいの後にこそ効いてくる対策になります。

SMSで届くワンタイムパスワードも、「持っているか」を確かめる方式の一つです。ただし米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を「制限付き(restricted)」の手段と位置づけています[9]。禁止ではありませんが、端末の入れ替えやSIMの変更、電話番号の乗り換え(ポーティング)といったリスクを踏まえ、それだけに頼りきらない設計が求められています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

今のログインを壊さずに「持っているか」の確認を足す方法については、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら


出典

  1. 日本郵政株式会社・日本郵便株式会社「郵便局アプリへの不正アクセスについて」(2026年9月29日)https://files.japanpost.jp/assets/34d9d11432734cfaa759e78fe395b688/c6b030844cf0412ab0d48f8bae7b3a75/20260929_01_01.pdf
  2. ゆうID「ログイン/新規登録」(ゆうIDで使えるサービスの案内・2026年10月19日取得)https://mypage.jpid.pf.japanpost.jp
  3. ゆうID よくあるご質問「Q.2段階認証とは何ですか」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/9774492783119
  4. ゆうID よくあるご質問「Q.2段階認証の設定方法を教えてください」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/9767804832783 /「Q.リカバリーコードとは何ですか」https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/9767799993231
  5. ゆうID よくあるご質問「Q.パスキーを設定してもIDとパスワードのログインは可能ですか」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/13781874710031
  6. ゆうID よくあるご質問「Q.ログイン用メールアドレスを忘れてしまいました」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/9767766254095 /パスワードの再設定受付画面 https://mypage.jpid.pf.japanpost.jp/password/reset/request
  7. ゆうID よくあるご質問「Q.e転居の申し込みの流れを教えてください」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/11881524308879
  8. ゆうID よくあるご質問「Q.ゆうIDを登録する際、携帯電話番号は必須ですか」(2026年10月19日取得)https://faq-jpid.pf.japanpost.jp/hc/ja/articles/15227261086351
  9. NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html
  10. ソフトバンク 送信元が偽装されたSMSに関するご注意(2020年3月4日掲載、2020年12月3日更新)https://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20200304a/
記事一覧へ戻る

認証のお悩みを
オンラインで無料相談

まずは相談する