足利市斎場予約システム約8,800件の情報漏えいのおそれ、亡くなった方と申請者の氏名・住所・電話番号で何をされるのかまとめました

漏えい事故まとめ
足利市斎場予約システム約8,800件の情報漏えいのおそれ、亡くなった方と申請者の氏名・住所・電話番号で何をされるのかまとめました

栃木県足利市は2026年10月18日に、斎場の予約に使っている「足利市斎場予約システム」が第三者による不正アクセスを受け、個人情報が外部に漏えいしたおそれがあると公表しました[1]。システムを提供している委託先の株式会社ビジネステック(茨城県ひたちなか市)も、同じ日にお知らせを出しています[2]。

漏えいのおそれがあるとされているのは、2022年12月1日以降にシステムを利用した分の斎場利用者の情報約8,800件と、登録している葬祭事業者56社の情報です[1]。利用者の情報には、亡くなった方の氏名・生年月日・住所・性別と、申請した方の氏名・住所・電話番号が含まれるとしています[1]。

公表文には、決済の情報やパスワードについての記載はありません[1][2]。ただ、だからといって安心とは言い切れません。この記事では、「自分は何をされるのか」と「会社・自治体としてどこから手を打つか」の2つにお答えします。

要点は3つです。

  • 利用者への注意:葬儀や斎場、市役所を名乗る電話・郵便物・訪問は、亡くなった方の名前や住所が合っていても本物とは限りません。
  • 利用者がやるとよいこと:お金や手続きの話が出たら、その場で決めず、自分で調べた市や葬祭事業者の番号にかけ直して確かめることです。
  • 会社がまず見直す所:葬祭事業者が予約システムに入る時の確認と、委託先の保守・管理の入口です。

何が起きたか

項目 公表されている内容
公表日 2026年10月18日(足利市[1]・ビジネステック[2])
発覚 2026年10月15日午後5時ごろ、委託先の調査で第三者による不正アクセスが判明したとしています[1]
起きたこと データベースへの不正な照会と、システムのお知らせ欄への不正なデータ追加が確認されたとしています[2]
件数 斎場利用者の情報 約8,800件、登録葬祭事業者 56社[1](委託先は「約8,800人分」と見込んでいます[2]。報道では、市は10月20日に8,827件と発表したとされています[7])
漏えいのおそれがある情報 亡くなった方の氏名・生年月日・住所・性別、申請者の氏名・住所・電話番号、葬祭事業者の会社名・住所・電話番号・メールアドレス[1]
段階 市は「漏えいした可能性がある」としています[1]。委託先は、種類と範囲は調査中としています[2]
対応 システムを全面停止し、予約は電話で受付。登録葬祭事業者にはメール等で知らせ、対象の人・事業者には委託先から順次通知するとしています[1]
原因 「第三者による不正アクセス」とだけ書かれ、詳しい経路は調査中です[1][2]

市は、調査結果や影響の範囲がわかり次第、ホームページなどで公表するとしています[1]。続報で内容が変わる可能性があります。

なお報道によると、同じ会社のシステムを使う茨城県内の公営斎場11施設でもシステムが止まり、予約は電話などで受けているとされています。ただし、これらの斎場では情報の漏えいは確認されていないとされています[4]。

漏れた情報で何ができてしまうか

今回の情報の特徴は、「身内を亡くしたばかりの家族」とわかる形でまとまっていることです。

漏れたおそれのある情報 一般的に考えられる使い道
亡くなった方の氏名・生年月日・住所 故人の名前を出した手紙や電話。「生前のご契約の件で」「未払いの料金が」と、本人にしか確かめられない話を持ち出す
申請者の氏名・住所・電話番号 遺族あての電話や訪問。仏壇・墓石・遺品整理・相続の相談などを装った勧誘の名簿になりうる
斎場を利用した人の情報であること(2022年12月以降の利用分[1]) 利用日そのものは公表された項目にありませんが、身内を亡くした家族だとわかるため、「四十九日」「香典返し」「年金や保険の手続き」など、時期に合わせた偽の案内を作りやすくなる
葬祭事業者の会社名・メールアドレス・電話番号 市や委託先を名乗る偽のメール。「システム再開のため」としてログイン情報の入力を求める手口の材料になりうる

いずれも一般論で、今の時点で確認された被害ではありません。

遺族は、葬儀の後に役所・金融機関・保険・年金などから本物の連絡を次々に受ける時期にあります。偽の連絡が混ざっても見分けにくい時期です。

市も、市役所や関係機関、委託事業者を装った不審なメールや電話が来る可能性があるとして、相手の身元が確認できない場合は応答しないよう呼びかけています[1]。電話番号が漏れた人には、送り主の名前を偽ったSMSが届く可能性もあります。SMSは送り主を偽装でき、本物と同じ画面(スレッド)に並ぶことがあると、通信会社も注意を呼びかけています[5]。

このシステムで認証が使われる場所

斎場の予約システムは、一般の会員サービスとは違い、葬祭事業者と市が使う業務の仕組みです。市の公表文でも、利用者は「登録葬祭事業者」と「斎場利用者」に分けて書かれています[1]。公開情報で確認できた範囲で並べました。

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
葬祭事業者が予約システムに入るところ 登録した葬祭事業者が使う仕組み[1]。ログインの方式は確認できず 事業者のメールアドレスが漏えいのおそれ。偽メールでログイン情報を聞き出される入口になりうる 高
委託先の保守・管理のための入口 確認できず 原因は調査中[1][2]。どの入口から入られたかは公表されていません 要確認
空き状況の公開ページ 予約状況を公開するページがある[3]。ログインの要否は確認できず 個人情報との関係は確認できず 要確認
停止中の電話予約 電話で受付[1]。本人や事業者の確かめ方は確認できず もし事業者名や申請者の氏名・電話番号が合えば受け付ける運用なら、今回の情報で他人になりすませるおそれ 要確認
利用当日の使用許可の申請 当日、利用前に斎場の窓口で申請し、使用料も払う[3] 窓口で手続きするため、漏れた情報だけで進めるのは難しい 低
市・委託先の問い合わせ窓口 確かめ方は確認できず 「対象かどうか確かめたい」という問い合わせに乗じて、家族を装う人が出てくる可能性 中
同じ会社が提供する他の斎場のシステム 報道では茨城県内11施設が停止、漏えいは確認されていない[4] サーバーや入口の作りが同じかどうかは公表されていません 要確認

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社・自治体がまず見直すとよい所

市と委託先の公表文では、システムの停止、原因の究明、情報管理の強化が挙げられています[1][2]。ログインの確かめ方を変えるといった記載はありませんでした。認証の観点からは、次の順で見直すことが考えられます。

  1. 葬祭事業者が予約システムに入る時の確認を見直す。事業者のメールアドレスが漏れたおそれがある今、再開の連絡を装った偽メールが届くことも考えられます。IDとパスワードを入れるだけで入れる形なら、もう一つ確かめる手段を足す時期です。
  2. 委託先の保守・管理の入口を確かめる。今回はデータベースへの照会と、お知らせ欄への書き込みがありました[2]。誰が、どこから、どの確認を経て管理の画面に入れるのかを、再開の前に洗い出しておきたいところです。同じ会社のシステムを使う他の自治体にとっても、同じ確認が役に立ちます。
  3. 電話や窓口での確かめ方を決めておく。停止中は電話で予約を受けています[1]。名前や電話番号が合うことだけで本人や事業者と見なさない、という運用の決まりは、仕組みを作り直さなくても始められます。

認証の観点から

米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を「制限付き(restricted)」の手段と位置づけています。禁止ではありませんが、端末の入れ替えやSIMの変更、電話番号の乗り換え(ポーティング)といったリスクを踏まえ、それだけに頼りきらない設計が求められています[6]。

これとは別に、届いた数字を入力する方式は、偽サイトに誘導されて入力すると相手に使われるおそれがある、と一般的に言われています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

今回漏れたおそれがあるのは、名前・住所・電話番号といった「知っていれば本人らしく見える情報」です。知っていることではなく、その回線を持っていることで確かめる仕組みは、葬祭事業者のように決まった電話番号で仕事をする相手とも相性のよい考え方です。

再開の前に、入口の確かめ方を一度見直しておくとよいでしょう。

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出典

[1]足利市「「足利市斎場予約システム」における不正アクセスに伴う個人情報の漏えいのおそれについて」2026年10月18日 https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/facility/000108/p008829.html (取得日:2026年10月21日)

[2]株式会社ビジネステック「斎場予約システムへの不正アクセス及び個人情報漏洩のおそれに関するお詫びとお知らせ」2026年10月18日 https://www.busitec.co.jp/news/info (取得日:2026年10月21日)

[3]足利市「足利市斎場について」 https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/facility/000108/p002414.html (取得日:2026年10月21日)

[4]茨城新聞クロスアイ「不正アクセス 茨城県内11斎場 対応追われる システム停止 予約、電話で受け付け」2026年10月21日(Yahoo!ニュース配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/7ca27418cd7e005d4b3fa421929e302e7addd758 (取得日:2026年10月21日)

[5]ソフトバンク「送信元が偽装されたSMSに関するご注意」(2020年3月4日掲載、2020年12月3日更新) https://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20200304a/ (取得日:2026年10月21日)

[6]NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html (取得日:2026年10月21日)

[7]東京新聞デジタル「足利・市斎場予約の情報 8827件など漏えいか 委託先へ不正アクセス」2026年10月21日 https://www.tokyo-np.co.jp/article/522935 (取得日:2026年10月21日)

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