吉野家・はなまるのアルバイト応募者5,366件の情報漏えい、漏れた電話番号とメールアドレスで何をされるのかまとめました

漏えい事故まとめ
吉野家・はなまるのアルバイト応募者5,366件の情報漏えい、漏れた電話番号とメールアドレスで何をされるのかまとめました

2026年9月30日、株式会社吉野家ホールディングスは、吉野家とはなまるがアルバイト採用業務を一部委託していた株式会社ApplyNowの採用管理プラットフォームへの不正アクセスで、個人情報が漏えいしたと公表しました[1]。対象は、2022年4月11日から2024年6月30日までに応募した人の情報で、吉野家4,998件、はなまる368件です[1]。漏れたのは、氏名(カナ)・メールアドレス・電話番号などで、サービスによっては生年月日・性別・一部の方の住所・職業も含まれるとしています[1]。

面接の録画データは別の保管場所にあり、不正アクセスは確認されていないとしています[1]。また、二次被害も確認されていないとしていますが、それで安心とは言い切れません。

「数年前に応募しただけの自分の情報で、何をされるのか」。「会社として、どこから手を打てばよいのか」。この記事では、その2つに答えるために、漏れた情報が悪用されうる場面と、採用の仕組みの中で本人確認が要る場所を、公開情報から整理しました。事故の経緯は報道も扱っているため、短くとどめます。

この記事の要点

  • 吉野家・はなまる・ApplyNow・求人企業などを名乗る、名前入りのメールやSMS、電話に注意してください。会社側は暗証番号やパスワード、認証コードを尋ねないとしています。
  • 応募者のパスワードは、公表された項目には含まれていません。採用担当者だった人で、同じパスワードを他のサービスでも使っている場合は、変えておくと安心です。
  • 会社がまず見直したいのは、採用担当者のログインの確かめ方と、契約が終わった委託先に残るデータとアカウントです。

なお、本記事は公表文など公開情報だけをもとにしています。仕組みの画面を実際に試すような調査はしていません。確認できなかった点は「確認できず」と書いています。

何が起きたか(要約)

公表文[1][2]によると、概要は次のとおりです。

項目 内容
不正アクセスの期間 2026年8月9日〜9月7日(データ分析ツールの脆弱性を悪用)。9月7日にデータベースから一部のデータが不正に出力されたことを確認
委託先からの連絡 9月16日、ApplyNowから吉野家ホールディングスへ連絡
応募者 吉野家4,998件、はなまる368件(応募期間 2022年4月11日〜2024年6月30日)
応募者の項目 「Interview Cloud」=氏名(カナ)、メールアドレス、電話番号、生年月日、性別、一部の方の住所、職業/録画面接「ApplyNow」=氏名(カナ)、メールアドレス、電話番号
採用担当者 418件。採用担当者のユーザー名、メールアドレス、暗号化されたパスワード、権限
含まれないもの 面接の録画データ(別の保管領域)
背景 契約終了で消えると認識していた応募者の情報が、ApplyNowのデータベースに残っていた

採用担当者の418件はアカウントの数で、重複があるため人数とは一致しないとしています[1]。なお、ApplyNowは9月9日の公表で、同じ不正アクセスで電子雇用契約「ApplyNow Sign」の個人番号や金融機関口座情報なども漏えいした可能性があるとしていました[2]。10月9日の更新では、その後の調査で漏えいの事実を確認したとし、対象は約39万人(うちApplyNow Signの利用者が約3万人)で、件数は外部機関の調査で確定するとしています[5]。吉野家・はなまるの対象項目には、ApplyNow Signの情報は挙げられていません[1]。

漏れた情報で、何ができてしまうか

漏れた情報 攻撃者にとっての使い道(一般的に考えられるもの)
氏名+電話番号 名前入りのSMSや電話で、採用や給与の手続きを装える。送り主を偽ったSMSが、本物と同じ画面(スレッド)に並んで表示される手口も知られています[3]
氏名+メールアドレス+応募先 「以前ご応募いただいた吉野家の採用担当です」と、事情を知っている人のふりをしたメールを送れる
生年月日・住所 他のサービスで本人確認の質問に使われていれば、答えの材料になる
採用担当者のユーザー名+メールアドレス+暗号化されたパスワード+権限 誰が管理者かがわかる。パスワードは暗号化されていても、解読を試みる材料になりうる。担当者あての狙いを定めたフィッシングにも使える

公表文自体も、吉野家・ApplyNow・求人企業・行政機関・金融機関などを装った不審なメール、SMS、電話の可能性に触れています[1]。応募者は、すでに採用の手続きで連絡を受けたことがある人たちです。採用の連絡らしく見える偽物は、見分けにくくなります。

この採用の仕組みで認証が使われる場所

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
採用担当者の管理画面ログイン ユーザー名とパスワードを使っていることは、漏れた項目からわかる[1]。二段階認証の有無は確認できず ユーザー名・メールアドレス・暗号化されたパスワードが漏れた。ApplyNowは影響を受けうる企業ユーザーにパスワード変更を促し[2]、9月11日には管理画面のパスワードを強制的にリセットしたとしています[5] 高
権限の高いアカウント 「権限」の情報が漏れた[1] 誰を狙えば多くの応募者情報に届くかがわかる 高
応募者への連絡(面接案内など) メールアドレス・電話番号を応募時に預けている[1]。連絡の手段の詳細は確認できず 本物の採用連絡と偽物の区別がつきにくくなる 高
パスワード変更・再設定の案内 事故の後、変更を促す連絡が実際に送られた[2] 「パスワードを変えてください」という偽メールが紛れ込みやすい時期になる 中
問い合わせ窓口での本人確認 どの項目で本人確認しているかは公開されておらず、確認できず もし氏名・電話番号・生年月日が合えば本人と見なす運用なら、今回漏れたのはまさにその情報 要確認
契約終了後の委託先の環境 消えると認識していた情報が残っていた[1]。担当者アカウントの扱いは確認できず 使わなくなった仕組みのデータやアカウントは、見張りの目が届きにくい 要確認

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社がまず見直すとよい所(優先順)

公表文では、委託先の管理体制や契約内容、定期的な監査などの見直しと、SaaS導入時の審査やログ管理などの強化が挙げられています[1]。一方で、ログインの確認方法を変えるといった記載はありませんでした。認証の観点からは、次の順で見直すことが考えられます。

  1. 採用担当者のログインに、パスワード以外の確認をもう一つ足す。今回は担当者のパスワードそのもの(暗号化済み)が出ています。パスワードだけで入れる形のままだと、解読や使い回しに備えられません。
  2. 契約が終わった委託先のアカウントとデータを棚卸しする。使わなくなった管理者アカウントが残っていないか、データの消去が確認できているか。
  3. 応募者への公式な連絡のしかたを決め、応募者に知らせる。「この経路以外からは連絡しない」と示しておけば、偽の連絡を見分ける手がかりになります。

認証の観点から:「番号を知っている」と「その電話を持っている」は違う

今回、5,000件を超える応募者の電話番号と、採用担当者のログインに関わる情報が漏れました。ここで分けて考えたいのは、「電話番号を知っていること」と「その電話番号の回線を実際に持っていること」は別物だという点です。

前者は、もう第三者に知られてしまったかもしれません。一方で後者は、情報が漏れても変わりません。パスワードのように「知っているか」で確かめる仕組みは、漏れた時点で弱くなります。認証の土台を「持っているか」へ移すことが、漏えいの後にこそ効いてくる対策です。

SMSで届くワンタイムパスワードも、「持っているか」を確かめる方式の一つです。ただし米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を「制限付き(restricted)」の手段と位置づけています[4]。禁止ではありませんが、端末の入れ替えやSIMの変更、電話番号の乗り換え(ポーティング)といったリスクを踏まえ、それだけに頼りきらない設計が求められています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

今のログインを壊さずに「持っているか」の確認を足す方法については、お気軽にご相談ください。

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出典

  1. 株式会社吉野家ホールディングス・株式会社吉野家・株式会社はなまる ApplyNow採用管理プラットフォームへの不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお知らせとお詫び(2026年9月30日)https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08813/afe2cda2/7ddb/4c8d/ac29/093acb365cc9/20260930152541531s.pdf
  2. 株式会社きちりホールディングス 当社子会社における個人情報漏えいに関するお知らせとお詫び(別紙:株式会社ApplyNow 当社サービスをご利用いただいているお客様への重要なお知らせとお詫び)(2026年9月9日)https://www.kichiri.co.jp/wp-content/uploads/2026/09/2609091111.pdf
  3. ソフトバンク 送信元が偽装されたSMSに関するご注意(2020年3月4日掲載、2020年12月3日更新)https://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20200304a/
  4. NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html
  5. 株式会社ApplyNow 当社サービスをご利用いただいているお客様への重要なお知らせとお詫び(2026年9月9日掲載、2026年10月9日更新)https://applynow.co.jp/news/20260909 (2026年10月21日取得)
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