アットリンク 最大787医療機関の情報漏えいの可能性、患者の個人情報で何をされるのかまとめました

漏えい事故まとめ
アットリンク 最大787医療機関の情報漏えいの可能性、患者の個人情報で何をされるのかまとめました

2026年10月15日、株式会社メドレーは、同社が提供する医療機関向けの業務支援システム「@link(アットリンク)」、患者向けの「アットリンクアプリ」と周辺サービスのシステムに、第三者による不正アクセスを確認したと公表しました[1]。同社は、アットリンクに登録された患者などの個人情報が外部に漏えいした可能性があるとしています。

漏えいの対象となる可能性のある医療機関は、最大でアットリンクを使う全787件です[1]。一方で、漏えいの有無や、どの情報の項目が対象か、どの医療機関が対象かは、外部の専門機関と調べている最中としています[1][2]。

項目がまだわからない段階なので、安心とは言い切れません。アットリンクは産婦人科・産科・婦人科での導入をうたうシステムで[3]、機能には妊娠週数や最終月経日の表示、出産の管理などが含まれます[2][3]。どの情報が対象になるかによって、影響の重さが大きく変わるからです。

「自分の情報で、これから何をされるのか」。「会社として、どこから手を打てばよいのか」。この記事では、その2つに答えるために、考えられる悪用の場面と、アットリンクで認証が使われる場所を、公開情報から整理しました。事故の経緯は多くの報道が扱っているため、短くとどめます。

この記事の要点

  • 「アットリンク再開のお知らせ」「再ログインのお願い」といった、アットリンクや通院先の医療機関を名乗る連絡に注意が要ります。リンクから開かず、通院先の公式サイトなどで確かめるのが安心です。
  • アットリンクアプリと同じパスワードを、他のサービスでも使っている人は、変えておくと安心です。
  • 会社側がまず見直したいのは、医療機関の職員や運用者がシステムに入る時の確認と、患者のアプリを再開する時のログインの確認です。

なお、本記事は公表文や公式サイトなど、公開情報だけをもとにしています。ログイン画面を実際に試すような調査はしていません。確認できなかった点は「確認できず」と書いています。

何が起きたか(要約)

公表文[1]と、アットリンクの公式サイトのお知らせ[2]によると、概要は次のとおりです。

項目 内容
発覚 2026年10月11日、外部の専門機関から不正アクセスの可能性について情報提供を受けて調査を始め、第三者による不正アクセスを確認
停止 10月14日深夜から、アットリンク、アットリンクアプリ、周辺サービスの提供を一時停止
対象となる可能性 最大で、アットリンクを使う全医療機関(787件)
漏えいの段階 患者などの個人情報が外部に漏えいした「可能性」。漏えいの有無と範囲(項目・医療機関)は調査中
対応 個人情報保護委員会への報告と警察への相談。お知らせでは厚生労働省などへの報告も挙げています
その後 10月16日19時の更新で、オンプレミス型とクラウド型が混在するため精査に時間がかかっているとしつつ、対象の項目と医療機関の範囲はその週末から週明けにかけて概ね特定できる見通しとしています。再開の見通しは10月19日中に改めて知らせるとしています[2]

再発防止策は、調査の結果を踏まえて講じるとしています[1]。同社は調査を続けており、対象の項目や医療機関は今後の続報で変わる可能性があります。

漏れた場合に、何ができてしまうか

対象の項目はまだ公表されていません。そこで、停止中のサービスとして挙げられた機能[2]から、アットリンクで扱われている情報の種類を並べ、漏れた場合の使い道を整理しました。

扱われている情報の種類(機能から) 漏れた場合の使い道(一般的に考えられるもの)
診察券番号(デジタル診察券・アプリのログイン[2][4]) アプリのログインに使う情報の一つそのもの[4]。パスワードと組み合わせて試される材料になる
予約の内容(予約受付・WEB予約[2]) 「ご予約の確認」「予約の変更手続き」など、本人の予約に合わせた偽の連絡を作りやすくなる
妊娠週数・最終月経日・出産に関する情報(表示・登録の機能[2][3]) 人に知られたくない情報そのもの。時期に合わせた「出産準備」「お祝い」をかたる勧誘や偽の連絡の材料になりうる
問診の回答(アットリンク問診[2]) 体の状態に関わる情報。内容によっては、つけこまれやすい弱みとして使われうる
メールの送信先(メール送信の機能[2]) 医療機関やアットリンクを名乗る偽メールの宛先になる

送り主を偽ったSMSが、本物と同じ画面(スレッド)に並んで表示される手口も知られています[6]。メールだけでなくSMSにも気をつけたいところです。

大事なのは、医療の情報は「本物の病院からの連絡らしく見せる材料」になり、しかも取り消しがきかない点です。パスワードは変えられますが、妊娠や受診の事実は変えられません。

アットリンクで認証が使われる場所

アットリンクには、患者が使う入口と、医療機関の職員が使う入口があります。公式の情報で確認できた範囲で並べました。

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
アットリンクアプリへのログイン 通院先のクリニックを選び、診察券番号とパスワードでログイン。設定すると次回から自動ログイン[4]。2段階の確認は確認できず 診察券番号は紙やカードにも書かれる番号。もし漏れた項目に含まれていれば、残る守りはパスワードだけになる 高
WEB予約サイト・動画の閲覧サイトなどの関連サービス アプリでログイン設定をすると、Web予約サイトやWovieなどに自動ログインできる[4] 一つのログインで複数のサービスにつながるため、入られた時の影響が広がりやすい 高
WEB予約サイト単独でのログイン・パスワードの再設定 確認できず 再設定の確認がメールだけなら、メールのアカウントを乗っ取られた時に守りが弱くなる 要確認
オンライン決済(クレジットカード払い) 停止中[2]。支払い時の追加の確認は確認できず カード情報が対象かは公表されていない 要確認
医療機関の職員が使う業務画面(予約・受付・患者・入院・出産の管理[3]) 確認できず。オンプレミス型とクラウド型が混在[2] 患者の情報がまとまって置かれる場所。どこから入られたかは調査中 高
問い合わせ窓口での本人確認 どの項目で本人を確かめるかは確認できず もし診察券番号や生年月日が合えば本人と見なす運用なら、漏れた項目と重なるおそれがある 要確認

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社がまず見直すとよい所(優先順)

公表文では、調査の結果を踏まえて必要な追加対策と再発防止策を講じるとしています[1]。現時点で、ログインの確認方法を変えるといった記載はありませんでした。不正アクセスの原因も調査中で、認証が関わったかどうかはわかっていません。そのうえで、認証の観点からは次の順で見直すことが考えられます。

  1. 医療機関の職員と運用者が業務画面や保守の経路に入る時に、「持っているか」の確認を足す。患者の情報がまとまっている場所ほど、知っている情報だけで通れる形を減らすことが考えられます。
  2. 患者のアプリを再開する時に、ログインを確かめ直す。いまは診察券番号とパスワード、その後は自動ログインという形です[4]。再開のタイミングで、本人の端末や回線を持っているかを一度確かめる形が考えられます。
  3. 患者に、本物の連絡の見分け方を先に伝える。再開の案内がどの手段で、どんな文面で届くのかを示しておくと、偽の「再ログインのお願い」と区別しやすくなります。

認証の観点から:「知っている」と「持っている」は違う

医療の情報は、一度知られると取り消せません。診察券番号やパスワードのような「知っている」ための情報も、漏れれば他人が同じように使えます。

一方で、「その端末や電話回線を実際に持っていること」は、情報が漏れても変わりません。患者が自分の記録を見る、予約を変える、職員が患者の情報を開くといった場面ほど、「知っているか」から「持っているか」へ土台を移すことが効いてきます。

SMSで届くワンタイムパスワードも、「持っているか」を確かめる方式の一つです。ただし米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を『制限付き(restricted)』の手段と位置づけています[5]。禁止ではありませんが、端末の入れ替えやSIMの変更、電話番号の乗り換え(ポーティング)といったリスクを踏まえ、それだけに頼りきらない設計が求められています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

今のログインを壊さずに「持っているか」の確認を足す方法については、お気軽にご相談ください。

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出典

  1. 株式会社メドレー「当社サービス『アットリンク』への不正アクセス及びサービスの一時停止に関するお知らせ」(2026年10月15日・適時開示)https://ssl4.eir-parts.net/doc/4480/tdnet/2895027/00.pdf
  2. アットリンク「アットリンクへの不正アクセスおよびサービスの一時停止に関する最新情報」(2026年10月15日掲載、10月16日19時更新・2026年10月18日取得)https://at-link.net/?p=3237
  3. アットリンク 公式サイト(2026年10月18日取得)https://at-link.net/
  4. App Store「アットリンク - 診療予約」(提供元 MEDLEY, INC.・2026年10月18日取得)https://apps.apple.com/jp/app/id1275325465
  5. NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html
  6. ソフトバンク 送信元が偽装されたSMSに関するご注意(2020年3月4日掲載、2020年12月3日更新)https://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20200304a/
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