日本経済新聞社 約183万件の情報漏えい、漏れた氏名・メールアドレス・電話番号で何をされるのかまとめました

漏えい事故まとめ
日本経済新聞社 約183万件の情報漏えい、漏れた氏名・メールアドレス・電話番号で何をされるのかまとめました

2026年10月16日、株式会社日本経済新聞社は、システム開発に使っているクラウドサービスが不正アクセスを受け、約183万件の個人情報が漏えいしたと公表しました[1]。このうち、氏名・メールアドレス・住所・電話番号・生年月日のいずれかを含むものが約15万件で、メールアドレスを含むものは約12万件としています。残りの約168万件は、単体では個人を特定できない識別子のみとのことです。クレジットカード情報は含まれていないとしています。

カード情報が含まれていない点は、不幸中の幸いです。ただ、それで安心とは言い切れません。日経のサービスでは、メールアドレスがそのままログインIDとして使われているからです[2]。

「自分のメールアドレスや電話番号で、これから何をされるのか」。「会社として、どこから手を打てばよいのか」。この記事では、その2つに答えるために、漏れた情報が悪用されうる場面と、日経IDで認証が使われる場所を、公開情報から整理しました。事故の経緯は多くの報道が扱っているため、短くとどめます。

この記事の要点

  • 日経を名乗る、本物らしいメールやSMSが届くおそれがあります。漏えいが確認された人には、同社から個別に知らせるとしています[1]。
  • 日経IDのパスワードを他のサービスと同じにしている人は、変えておくと安心です。2要素認証やパスキーも用意されています[2]。
  • 会社側がまず見直したいのは、今回の入口になった、社内からクラウドサービスへのログインの守り方です。

なお、本記事は公表文や公式のヘルプなど、公開情報だけをもとにしています。ログイン画面を実際に試すような調査はしていません。確認できなかった点は「確認できず」と書いています。

何が起きたか(要約)

公表文[1]によると、概要は次のとおりです。

項目 内容
不正アクセス 2026年10月7日未明から朝にかけて、システム開発に使うクラウドサービスが不正アクセスを受け、クラウド上に保管していた個人情報が漏えい
原因 クラウドサービスにアクセスするための認証情報が、何らかの手段で盗まれた。具体的な手口は公表文に記載なし
報告 10月11日に個人情報保護委員会へ報告
件数 16日時点で約183万件。うち氏名・メールアドレス・住所・電話番号・生年月日のいずれかを含むもの約15万件(メールアドレスを含むもの約12万件)。単体では個人を特定できない識別子のみのもの約168万件
漏えいしていない項目 クレジットカード情報
対象のサービス どのサービスの利用者の情報かは、公表文に記載なし
二次被害 悪用などの二次被害や、システム停止・データ改ざんなどの異常は、16日時点で確認されていないとしています
対応 不正アクセスに使われた認証情報を無効化。漏えいが確認された人には個別に知らせるとしています

同社は、侵害を受けた範囲と漏えいした情報を精査しているとしています[1]。件数や対象は、今後の続報で変わる可能性があります。

漏れた情報で、何ができてしまうか

漏れた約15万件は、5つの項目の「いずれか」を含むものです。全員の全項目がそろって漏れたわけではありません。そのうえで、組み合わせによって次のような使い道が考えられます。

漏れた情報 攻撃者にとっての使い道(一般的に考えられるもの)
氏名+メールアドレス 名前を正しく書いた、日経を名乗る本物そっくりのメールを送れる。「漏えいのお詫びと確認のお願い」といった、今回の事故に便乗した文面も作りやすくなります
氏名+電話番号 名前入りのSMSを送れる。送り主を偽ったSMSが、本物と同じ画面(スレッド)に並んで表示される手口も知られています[4]
メールアドレス 日経IDのログインIDそのものがわかる[2]。他のサービスで漏れたパスワードと組み合わせて次々に試す「パスワードリスト攻撃」の材料になる
住所・生年月日 「本人しか知らないはずの情報」として、問い合わせ窓口などで本人になりすます材料になりうる

識別子のみの約168万件は、単体では個人を特定できないとされています[1]。ほかの情報と結びつくかどうかは、公表文からはわかりませんでした。

大事なのは、どれも「知っていれば本人らしく見える情報」だという点です。知っていることだけで本人と見なす仕組みは、その情報が漏れた時点で弱くなります。

日経IDで認証が使われる場所

公表文は対象のサービスを示していません。ここでは、日本経済新聞 電子版をはじめ日経グループの多くのサービスで共通に使われる「日経ID」[2]について、公式ヘルプで確認できた範囲で並べました。あわせて、今回の入口になった会社側のログインも載せています。

場所 今の方式(公開情報で確認できた範囲) 漏れた情報との関係 狙われやすさ
日経IDへのログイン(パスワード) IDはメールアドレス。パスワードでログイン[2] メールアドレスを含む約12万件が漏れた。パスワードの漏えいは公表文に記載なし。他と同じパスワードの人は、パスワードリスト攻撃で入られる可能性がある 高
2要素認証 有効にすると、ログイン時にワンタイムパスワードでの確認が加わる。ワンタイムパスワードは認証アプリかメールで受け取る。普段と違う環境からのログインでは、未設定でもワンタイムパスワードが加わることがある[2] メールで受け取る設定の場合、メールのアカウントを乗っ取られると守りが弱くなる 中
パスキー 端末の生体認証などでログイン。機種変更などで使えない時は、メールアドレスとパスワードでログインできる[2] パスキーそのものは、漏れた情報だけでは使えない。ただ、パスワードでのログインという別の道が残る 低(別の道は中)
パスワードを忘れた時 「パスワードをお忘れの方」から手続き[2]。どの方法で本人を確かめるかは確認できず もしメールの受信だけで再設定が終わる形なら、漏れたメールアドレスあての偽の「再設定」メールに注意が要る 要確認
登録情報の変更 メールアドレスや住所は、日経IDラウンジの「お客様情報」から変更[2]。変更時の追加の確認は確認できず 乗っ取られた後にメールアドレスを書き換えられると、本人が取り戻しにくくなる 中
社員・開発者のクラウドサービスへのログイン 今回の入口。アクセス用の認証情報が盗まれた[1]。多要素認証などの有無は公表文に記載なし 今回の事故そのもの 高
問い合わせ窓口での本人確認 どの項目で本人を確かめるかは確認できず もし氏名・住所・電話番号・生年月日が合えば本人と見なす運用なら、今回漏れた項目と重なる 要確認
決済 クレジットカード情報は含まれていない[1] お金を直接抜かれる入口は小さい 低

※「狙われやすさ」は、公開情報をもとにした当社の見立てです。実際のしくみを確かめたものではありません。

会社がまず見直すとよい所(優先順)

公表文では、被害状況の把握と原因究明を急ぎ、必要なセキュリティー強化策を講じるとしています[1]。一方で、クラウドへのログインや、利用者のログイン・再設定の確認方法を変えるといった具体的な記載はありませんでした。認証の観点からは、次の順で見直すことが考えられます。

  1. 社内からクラウドサービスへのログインを、「盗まれても使えない」形に近づける。今回は認証情報が盗まれたことが入口でした。IDとパスワードや鍵だけで入れる経路が残っていないかを洗い出し、持ち物での確認を足すことが考えられます。
  2. パスワードの再設定と登録情報の変更に、メール以外の確認をもう一つ足す。メールアドレスがIDを兼ねるため、メールだけで完結する手続きは、偽メールやメールの乗っ取りに弱くなります。
  3. 利用者に、本物の連絡の見分け方を先に伝える。個別の通知がどの手段で、どんな文面で届くのかを示しておくと、便乗した偽の連絡と区別しやすくなります。

認証の観点から:「知っている」と「持っている」は違う

今回の事故は、二つの「知っている」が重なっています。一つは、クラウドに入るための認証情報を攻撃者が知ってしまったこと。もう一つは、ログインIDであるメールアドレスや電話番号を、多くの第三者が知りうる状態になったことです。

知られた情報は、取り消せません。一方で、「その端末や電話回線を実際に持っていること」は、情報が漏れても変わりません。本人かどうかを確かめる場面ほど、「知っているか」から「持っているか」へ土台を移すことが効いてきます。

SMSで届くワンタイムパスワードも、「持っているか」を確かめる方式の一つです。ただし米国NISTのガイドラインは、SMSなど電話網を使う確認方法を『制限付き(restricted)』の手段と位置づけています[3]。禁止ではありませんが、端末の入れ替えやSIMの変更、電話番号の乗り換え(ポーティング)といったリスクを踏まえ、それだけに頼りきらない設計が求められています。

当社Infront Securityの電話番号認証は、利用者がワンタップで指定の番号に発信し、その発信者番号と端末の情報をサーバー側で照合して本人を確かめます。電話番号を知っていても、その回線から発信できなければ認証は通りません。偽サイトは利用者の電話回線を持っていないため、フィッシングに耐性のある方式です。

今のログインを壊さずに「持っているか」の確認を足す方法については、お気軽にご相談ください。

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出典

  1. 株式会社日本経済新聞社「不正アクセスによる個人情報漏洩について」(2026年10月16日)https://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/news/information/1561.html
  2. 日経IDラウンジ ヘルプセンター(日経IDとは/パスキーについて/2要素認証について/パスワードを忘れた方へ/日経IDに登録した会員情報の変更方法)(2026年10月18日取得)https://www.nikkei.com/lounge/help/
  3. NIST SP 800-63B Rev.4(2025年8月)§3.1.3.3 https://pages.nist.gov/800-63-4/sp800-63b.html
  4. ソフトバンク 送信元が偽装されたSMSに関するご注意(2020年3月4日掲載、2020年12月3日更新)https://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/20200304a/
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