マッチングアプリ詐欺の被害額が過去最悪に——JPKI導入後も残る課題と「継続的な本人認証」対策【2026年最新】

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公開日: 2024年10月10日|最終更新日: 2026年7月17日
マッチングアプリ詐欺の被害額が過去最悪に——JPKI導入後も残る課題と「継続的な本人認証」対策【2026年最新】

マッチングアプリを入口とするロマンス詐欺の被害が、過去最悪を更新し続けています。

マッチングアプリ事業者にとって、なりすまし・詐欺アカウントへの対策は、サービスの信頼性を左右する経営課題となっています。本記事を最初に公開した2024年秋の時点では、「政府がマッチングアプリの本人確認にマイナンバーカードの活用を働きかける方針」という段階でした。その後、デジタル庁と業界団体の協定締結、大手アプリでの公的個人認証サービス(JPKI)導入が相次ぎ、登録時の本人確認は大きく前進しています。

ところが、被害額は減るどころか増え続けています。登録時の確認強化だけでは防ぎきれない、構造的な課題が残っているためです。本記事では、2026年時点の最新統計と業界動向を整理したうえで、JPKI導入後もなお残る課題と、事業者が取り得る「継続的な本人認証」の対策を解説します。

1. マッチングアプリ詐欺被害の実態——2025年(令和7年)確定値で見る現状

出会いの主要手段として定着したマッチングアプリ

マッチングアプリは、いまや恋愛・婚活における主要な出会いの手段として社会に定着しました。デジタル庁の発信でも、こども家庭庁の調査を引きながら「結婚した夫婦の4人に1人がマッチングアプリで出会う」時代とされており、大手アプリ「Pairs(ペアーズ)」は2023年9月時点で累計登録数2,000万を突破しています。低価格な月額料金や無料プランの提供により手軽に始められることもあり、若年層に限らず幅広い年代に利用が広がっています。

利用者の裾野が広がった一方で、その匿名性と手軽さを悪用する詐欺グループにとっても、マッチングアプリは格好の「入口」となってしまっています。

被害総額は1,834.3億円で過去最悪を更新

警察庁の広報資料(令和7年確定値)によると、2025年(令和7年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害総額は1,834.3億円(SNS型投資詐欺1,288.0億円、SNS型ロマンス詐欺546.4億円)にのぼり、前年から562.4億円増加して過去最悪を更新しました。

とりわけ注目すべきは犯人との「接触ツール」です。SNS型ロマンス詐欺では、被害者が犯人と最初に接触したツールとしてマッチングアプリが32.7%で最多となっています。投資型の詐欺ではSNS上の広告やダイレクトメッセージが主な入口となる一方、恋愛感情を利用するロマンス型では、マッチングアプリが最大の入口になっているのです。

利用者がアプリを通じて知り合った相手と、直接会うことなくメッセージを重ねるうちに親密さや恋愛感情を抱き、最終的に投資名目などで金銭を騙し取られる——この構図は変わらないまま、被害の規模だけが拡大し続けています。

マッチングアプリ詐欺の被害事例

以下は国民生活センターが公表した相談事例です(2022年12月公表の報道発表資料より)。オンラインのやり取りだけでは相手の身元確認が不十分になりがちで、問題が発生した際に相手の足取りを追うことが困難になる点に留意が必要です。

ケース1 マッチングアプリで日本在住のワイン輸入業者の役員を名乗るイギリス人男性と知り合い、無料メッセージアプリで連絡を取り合うようになりました。彼は「結婚後に資金を出し合って投資しよう」と提案し、利用者は暗号資産で130万円、さらに男性に会うために追加で40万円を送金しました。その後も追加の送金を求められ、20万円を送った後、男性との連絡が途絶えました。

ケース2 マッチングアプリで知り合った中国人女性に、FX取引で儲けていると勧められ、彼女の指示でスマホに取引アプリをインストールしました。アドバイザーと称する人物とも連絡を取り、まず10万円、その後さらに200万円を国内の外国人名義の口座に振り込みました。アプリ内で利益が出ているのを確認して出金を依頼しましたが、返信が来なくなりました。

両ケースに共通するのは、「アプリ上で知り合った後、早い段階で外部の連絡手段に誘導され、金銭のやり取りはアプリの外で行われている」という点です。これは後述する「JPKI導入後も残る課題」を考えるうえで重要なポイントです。

2. 本人確認は「券面撮影」から「JPKI」へ——実現した政府・業界の対策

従来型eKYCの限界が出発点

マッチングアプリの多くは、身分証の写真提出と顔照合を組み合わせたeKYC(電子的な本人確認)を採用してきました。しかし、券面の画像をベースとする確認方式は偽造書類に対して脆弱です。マイナンバーカードを含む偽造書類の製造拠点が摘発される事例が相次ぎ、精巧な偽造身分証が流通する状況では、画像照合だけでなりすましのリスクを排除することは困難でした。

こうした背景から2024年9月、当時の河野太郎デジタル大臣は、ロマンス詐欺抑止のため、マッチングアプリの本人確認にマイナンバーカードのICチップ読み取りや公的個人認証サービス(JPKI)を活用するよう業界に働きかける方針を示しました。

協定締結から大手アプリのJPKI導入へ——1年余りで進んだ実装

この方針は、その後1年あまりで具体的な実装へと進みました。

  • 2025年6月19日: デジタル庁と一般社団法人恋愛・結婚マッチングアプリ協会が「マッチングアプリサービスにおけるマイナンバーカード活用等に関する協定書」を締結。本人確認に加え、年齢・独身証明・所得証明といった属性情報の確認への活用も視野に、官民で協力する枠組みが整いました。
  • 2025年9月30日: 「タップル」がJPKIを用いた本人確認を開始しました。
  • 2025年12月1日: 「ペアーズ」が健康保険証をはじめとする券面情報のみによる本人確認を廃止し、本人確認の方法を「マイナンバーカードのICチップ読み取り」または「アプリ内のセルフィー(自撮り)と顔写真付き公的書類による認証」の2つに限定しました(運営元・株式会社エウレカが2025年11月に発表)。

JPKIは、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書の有効性を電子的に検証する仕組みです。券面の見た目をいくら精巧に偽造しても電子証明書までは複製できないため、偽造身分証による登録は実質的に無効化されます。登録時の本人確認の水準は、2024年当時と比べて格段に向上したといえます。

3. 登録時の厳格化だけでは防ぎきれない——JPKI導入後も残る3つの課題

もっとも、大手アプリのJPKI導入は2025年後半に始まったばかりであり、その効果が被害統計に本格的に表れるのはこれからです。ただ、登録時の確認をどれだけ厳格化しても、構造的に残る課題が3つあります。

課題1: 詐欺の実行現場は「アプリの外」にある

前述の被害事例が示すとおり、詐欺師はマッチング成立後、早い段階でメッセージアプリなど外部の連絡手段へ誘導します。投資話の持ちかけ、偽の取引アプリのインストール、送金指示といった詐欺の中核行為は、すべてアプリの外で行われるのです。送金先も暗号資産や他人名義の口座が使われ、追跡は容易ではありません。

つまり、登録時の本人確認をどれだけ厳格化しても、それだけでは被害発生の現場を捕捉できないという構造的な限界があります。

課題2: 本人確認は「登録時の一時点」にとどまる

JPKIによる確認は、あくまでアカウント作成時のスナップショットです。確認済みアカウントの譲渡・売買や乗っ取りが起きれば、「本人確認済み」のお墨付きごと悪用されてしまいます。登録後も継続的に「いま操作しているのが登録した本人か」を担保する仕組みが、次の焦点となります。

課題3: マイナンバーカード側の運用負担

JPKIの利用には4桁の暗証番号が必要であり、暗証番号の漏えいとカードの盗難が重なれば悪用リスクが生じます。また、電子証明書には発行から5回目の誕生日までという有効期限があり、更新を怠ると本人確認に利用できなくなります。カードの普及・利用拡大に伴うシステム負荷への対応も、引き続き求められる課題です。

4. 電話発信認証による「継続的な本人担保」——Infront Securityの解決策

こうした「登録時の確認だけでは埋めきれない」課題への解決策として、Infront Securityは電話発信による認証方式を提供しています。

高い本人担保性

Infront Securityは特許技術に基づき、顧客データベースに登録されている電話番号と、利用者から実際に発信された電話番号を認証サーバーで照合し、あわせて接続端末の情報を取得・登録します。

携帯電話の音声通話契約は、法令に基づき公的な身分証による本人確認を経て結ばれているため、電話番号は本人と強く紐づいた一意のIDです。不正を働こうとする者は、身元特定に直結する手元の実機からの発信を避ける傾向が強いため、電話発信認証は本人確認の信頼性が高い方式といえます。

「一時点」ではなく「継続的」な接点を保証できる

電話番号は、契約が続く限り本人と結びつき続けます。このため電話発信認証は、登録時だけでなく、ログイン時、プロフィールの大幅変更時、長期間の未利用後の再開時など、任意のタイミングで繰り返し実施できます。利用者の操作は指定番号への発信のみと負担が小さく、JPKIが担う「入口の厳格な確認」を、「登録後の継続的な本人担保」で補完する関係を構築できます。

万一の際の追跡可能性

万一、不正者が認証を突破して不正行為に及んだ場合でも、発信履歴という客観的な足跡が残ります。詐欺被害では証拠の確保が重要とされており、不正を働いた個人の身元特定につながる記録を残せる点は、被害回復や摘発の観点でも意義があります。

まとめ

マッチングアプリの本人確認は、デジタル庁と業界の連携により「JPKIによる入口の厳格化」という段階まで到達しました。しかし2025年の被害統計が示すとおり、詐欺の現場はアプリの外にあり、登録時の一時点確認だけでは被害を止めきれません。これからの事業者に求められるのは、登録後も続く「継続的な本人担保」です。電話発信認証は、その現実的な選択肢となります。マッチングアプリ事業者の皆様は、ぜひ一度Infront Securityにご相談ください。

更新履歴

  • 2026年7月17日: 警察庁の令和7年確定値に基づき被害統計を全面更新しました。あわせて、デジタル庁と恋愛・結婚マッチングアプリ協会の協定締結(2025年6月)、タップルのJPKI導入(2025年9月)、ペアーズの本人確認厳格化(2025年12月)など、公開後の業界動向を反映して構成を見直しました。
  • 2024年10月10日: 記事公開。

参考資料

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